ウクライナのゼレンスキー大統領は、ポーランドへのミサイル着弾直後からテレビ演説などでロシア批判を貫く。頑なな姿勢を疑問視する声にどう応えるのか
(photo アフロ)
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ポーランドへのミサイル着弾直後からテレビ演説などでロシア批判を貫く。頑なな姿勢を疑問視する声にどう応えるのか (photo アフロ)

 第3次世界大戦か……。ミサイルがポーランドに着弾し一時、高まった緊張は、沈静化しつつある。各国の思惑を読み解くと、この事態を契機に戦局が収束に向かう可能性も見えてきた。AERA2022年11月28日号の記事を紹介する。

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 ウクライナ国境から西に約7キロのポーランド南東部プシェボドフ村。畑が広がる小さな農村に15日午後3時40分ごろ、ミサイルが着弾、2人が死亡した。ロシアによるウクライナ侵攻後、周辺国で初めてとなる戦争に絡む死者となった。

 ポーランドは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だ。米国も加盟するNATOは集団防衛の任務を持つため、非加盟国であるウクライナが攻撃された場合とは違って、ポーランドが攻撃されたとなると軍事的な展開が大きく変わってくる。集団的自衛権の発動につながる可能性がある事態に、ニュースは一気に世界を駆け巡り、緊張が高まった。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は同日夜、ビデオ演説で、

「攻撃が我が国だけにとどまらないと何度言ったことか。集団安全保障に対するロシアのミサイル攻撃だ。テロはウクライナ国境の内側にとどまるものではない」

 と強く非難した。

 ロシアは関与を否定したものの、今年2月にウクライナ侵攻が始まってから約9カ月。長期化の様相を見せていた戦局が、悪い方へ急展開するのではないかと感じた人は多かったことだろう。

 だが、不穏なムードは翌16日に変わり始める。米国のバイデン大統領が、ミサイルがロシアから発射されたかどうかについて、

「異議を唱える初期段階の情報がある。軌道を考えると、ロシアから発射された可能性は低い」

 と発言。今後の対応は事態の解明を待ってから決めると慎重な姿勢を見せたのだ。

■米国は慎重な姿勢

 バイデン大統領はこの時、主要20カ国・地域首脳会議(G20)に出席するため、インドネシア・バリ島に滞在中だったが、植樹などの当初の予定を全てキャンセルした上で、居合わせた各国首脳とともに主要7カ国(G7)とNATOの緊急会合に出席した。米国の慎重な姿勢は、即座に各国に共有されたとみられる。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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