撮影/写真映像部・上田泰世
撮影/写真映像部・上田泰世

 新聞の最終面などに掲載されているテレビ・ラジオの番組表。その短い文章のどこかに、ちょっと素敵な仕掛けが施されていることがある。AERA 2022年11月21日号より紹介する。 

【写真】「L字」のメッセージが隠されたラテ欄はこちら

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 朝、郵便受けから新聞を取り出すと、1面にザッと目を通してから裏返す。最終面にあるのはその日のテレビ番組表。動画配信サービス隆盛の時代、私が定期的にテレビで見ているのはドラマ「相棒」と朝夜のニュース番組だけで、全くテレビをつけない日もある。それでも、テレビ番組表を眺めるのは体に染みついた習慣になっている。

 テレビ番組表はラジオ番組表と合わせて「ラジオ・テレビ欄」、略して「ラテ欄」と呼ばれることもある。一般全国紙4紙ではいずれも複数面にわたるが、地上波のテレビ番組表が掲載されるのは最終面だ(休刊日前日などを除く)。新聞のなかでは「一等地」で、需要が高いことの表れでもある。朝日新聞の場合、1972年8月1日から、それまで中面だった番組表を最終面に掲載するようになった。当日の朝刊によると「数多くの読者からの要望があった」という。

 この番組表は新聞社が独自に作成しているわけではなく、番組情報配信会社が各局の情報を取りまとめて配信、新聞社が発行地域に合わせて必要な局を選択し、掲載する。個別の文面を考案するのは各テレビ局の担当者。熟読するというよりは眺めることが多い番組表だが、その短い文章には番組制作者たちの創意工夫が隠されている。

 番組表の字数は厳密だ。地上波の場合1行10字、行数は日中で1時間あたり3行、プライムタイムで1時間6行。そこに番組名と概要をわかりやすく詰め込む文章は職人技と思えるものも多い。そして、縦読みなどの遊びが加わることもある。

■感謝伝えたかった

 9月28日には、北海道放送(HBC)の野球中継の番組表が話題を呼んだ。北海道新聞や朝日新聞北海道版などに掲載されたものだ。この日は北海道日本ハムファイターズの今季ホーム最終戦。そしてファイターズは来年、新球場へ本拠地を移す。ファイターズのホームスタジアムとして札幌ドームが使われる最後の試合だった。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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