photo(c)2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会
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 長野の山里に一人暮らす作家・ツトム(沢田研二)。畑を耕し、山で旬の食材をとって料理を作る。ときおり東京から恋人の真知子(松たか子)が訪ねてくる。そんな日々にある変化が──。連載「シネマ×SDGs」の28回目は、作家・水上勉の料理エッセイをもとに「喰らうは生きる」の精神を四季折々の風景とともに捉えた『土を喰らう十二ヵ月』の中江裕司監督に話を聞いた。

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 水上勉さんの料理エッセイに出合ったのは4年ほど前です。食べることは生きることで生きることは死ぬことが前提。そしてやっぱり生きることは愛することだ──そんなドラマや死生観を感じて映画にしたいと思いました。水上さん自身もモテ男だったし、ツトムは色気のある人じゃないとできない。沢田研二さんにお願いにあがったらメガネを外されて「今の僕はこんなですよ。本当にこれでいいか、ちゃんと見てください」と。すごく誠実な方だと感じました。

photo(c)2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会
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 料理は「おもしろそうな方だな」と思っていた土井善晴さんにお願いしたかった。でも最初は厳しかったですよ。「単にフードコーディネーターのようなことはやれない、君たちはどのレベルでこれをやりたいの」と。僕もしっかり考え直して「この映画の料理は主人公の生き方が表れる。その哲学作りから一緒にやっていただきたい」と話し、承諾していただきました。

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