性暴力事件で無罪判決が相次いだことを受けて始まったフラワーデモ=2019年6月、東京都千代田区
性暴力事件で無罪判決が相次いだことを受けて始まったフラワーデモ=2019年6月、東京都千代田区

 セクハラは絶対に許されない時代だ。問題に向き合う当事者や識者はどう考えているのだろうか。俳優の立場から見えるセクハラの現状と課題について、松崎悠希さんに聞いた。AERA 2022年11月21日号の記事を紹介する。

【写真】松崎悠希さんはこちら

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 映画界や演劇界のセクシュアルハラスメントについて、積極的にSNSで発信しています。加害に及ぶ監督や演出家など「権力者」を誰も批判できない。そんな常識を壊したいという強い思いがあるからです。

 現実は惨憺(さんたん)たるものです。オーディションの場で、そういうシーンがあるからという理由で女優を下着姿にさせる。演劇のワークショップで性的なシーンを無理やりやらせる。指導という目的でレイプなど性的加害行為をする。そんな被害を受けたものすごい数の俳優がいて、それによって俳優になりたいという夢も、その後のキャリアも人生も壊されてしまうんです。なのに加害者の監督や演出家はのうのうとキャリアが続く。俳優側が告発したくても、そのことで映画が中止になったり、他の出演者に迷惑がかかるからと踏み切れない。つまり作品が監督や演出家を守っている。そこの権力構造が、セクハラを生む根本です。彼らが「批判できない人」になっている。それっておかしいわけですよ、絶対に。

■コンセンサスがない

 私は「(こっちから)干してやろうぜ、クソ監督どもを」など、SNSでは激しい言葉を使うことも度々です。そのことへの批判もあります。でも、「損して誰かに得を取らせる」という思いが私にはあります。私への批判も起きることで、議論が一気に活性化し、絶対に批判を口にすることがタブーだった人たちが「批判してもいい人」になるんです。問題があることをまず認識してもらわなければ、問題の解決につながりませんから。

 映画界や演劇界全体としてセクハラについてのコンセンサスがないことも問題です。「これはやってはいけないこと」という指標がないんです。

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