花柄のマタニティードレスを着たバリアさん。表情は明るく健康そうだった。クリニックを併設したリビウのエージェントで話を聞いた(撮影/丹内敦子)
花柄のマタニティードレスを着たバリアさん。表情は明るく健康そうだった。クリニックを併設したリビウのエージェントで話を聞いた(撮影/丹内敦子)

 ウクライナでは代理出産が法律で認められ、外国人夫婦からの依頼が多いという。ロシアによる侵攻が続くなか、代理母となった女性に現地で話を聞いた。2022年11月21日号の記事を紹介する。

【写真】ロシアからミサイル攻撃されるウクライナ西部の都市リビウ

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「今は25週と5日で、予定日は10月の初めです。赤ちゃんは男の子のようです」

 バリア・ボロシュナさん(32)は大きなおなかをなでながらうれしそうに話す。しかし、おなかの赤ちゃんと彼女に生物学的なつながりはない。バリアさんは代理母なのだ。代理出産を仲介するエージェントを通し、アイルランド人夫婦からの依頼を受け、契約書を交わした。

 ウクライナではお金をもらって代理出産をすることは合法だ。これまで世界中から親になりたくても医学的に難しい夫婦が訪れていた。しかし、代理出産にもロシアによる侵攻が影響していると聞き、エージェントに取材を申し込んだところ、バリアさんを紹介された。

 バリアさんと会ったのは7月初旬、ウクライナ西部のリビウだった。リビウはポーランドとの国境から約70キロにある。これまでに数回、ミサイル攻撃を受けたものの戦闘の前線ではなく、ウクライナの中では比較的安全とみられている。

■2番目の理由はお金

 そんなリビウの中心部から南西に車で10分ほどのところに、エージェント「PARENS FERTILITY」はあった。エージェントといっても中はクリニックを併設し、白を基調とした明るく清潔な待合室や診察室があった。その一室で、バリアさんの話を聞いた。

 バリアさん自身には10歳になる子どもがいる。仕事は学校給食の調理係だ。離婚後は自分の両親といっしょに、リビウの北東約200キロにあるリブネの郊外に住んでいるという。

 なぜ代理母になったのか。バリアさんは率直に語る。

「私は養子がほしかったけれど、離婚していて仕事は学校のある期間だけという理由で、かないませんでした。子どもがほしい人の気持ちがわかるので、協力したかったのです。2番目の理由はもちろんお金です。私は自分の子どもに家を買って必要なものをそろえてあげたいのです」

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