撮影/岡田晃奈
撮影/岡田晃奈

 円安の影響で輸入・国産食品の価格差がなくなりつつあり、国産の方が安くなる逆転現象が起きている。加工品であるチーズは国産品が年々需要を伸ばしている。AERA2022年11月21日号の記事を紹介する。

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 加工品でも、輸入品の価格の高騰で国産品に割安感が生まれ、人気が集まるケースが増えている。もっともわかりやすいのが、輸入品が国内消費量の8割を超えるチーズだ。今年1月の輸入ナチュラルチーズのキロ単価は535円だったが、9月には718円と、半年あまりで3割以上アップ。前年同月比でも1.44倍と、けっこうな高騰をみせている(財務省貿易統計)。

■日本チーズにシフト

 一方、国産のナチュラルチーズは、コロナ禍のおうち需要や、輸入チーズの値上がりなどにより、年々生産量を増やしている。

「日本チーズは海外産に比べて高価でしたが、現在価格はほぼ同じレベルに。チーズによっては国内産の方が割安となっているものもあります。今まで海外産のチーズを楽しんでいた層が、日本チーズにシフトすることも多くなっています」

 そう語るのは、チーズプロフェッショナル協会副会長で、チーズ愛好家としても知られる坂上あきさんだ。2年に一度開かれる国産ナチュラルチーズのコンクール「Japan Cheese Awards2022」と連動して10月に開かれた日本のチーズのイベント「Cheese Fun!Fan!Fun!」は、5000人の国産チーズファンで賑わった。

国産チーズの強みといえば、 その地域の新鮮な生乳を使ってチーズ作りができること。また、1970年代以降に始まった工房でのチーズ作りの技術が向上し、伝統国に肩を並べるほどになったことも大きいという。

「日本人の勉強熱心さのほか、気候的にも温暖湿潤で多様な微生物叢(そう)に恵まれ、豊かな発酵食の文化があることも、チーズ作りに向いていたのだと思います」(坂上さん)

 そうしてできた国産チーズは繊細な味わいが特徴。味噌(みそ)、しょうゆなど、日本の伝統的な発酵食と組み合わせた「うまみの相乗効果」(同)で、ご飯や日本酒とも合うチーズも多いらしい。

 どんな味がするんだろう。さっそく今年10月に開かれた、国産ナチュラルチーズのコンクール「ジャパンチーズアワード2022」で受賞した、チーズの一部をお取り寄せして、味見してみた。

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