アメリカでもサッカーや水泳は人気の習い事ですが、あくまでやりたい人がやる任意の機会という印象です(画像/筆者提供)
アメリカでもサッカーや水泳は人気の習い事ですが、あくまでやりたい人がやる任意の機会という印象です(画像/筆者提供)

 アメリカでピラティスの教室に参加したら、マットを丸めて帰りたくなりました。涙が出るほどキツかったからです。1時間のレッスン中、常に動きっぱなしで休憩なし。動作やポーズも難しく、体中の筋肉が悲鳴を上げます。ピラティスは日本でもしたことがあるけれどここまで大変じゃなかった、と自分の体力のなさを嘆きました。

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 超上級者向けの教室に参加した訳ではないのです。いつも通うジムで毎週開催されている、誰でも歓迎の1時間クラス。参加しているのは私と同じような普通の男女。いや、普通というよりぽっちゃり、というかでっぷりな人が多い。アメリカの中でも私の住んでいたアラバマ州は肥満度が高い(肥満度36.1%で全米第7位)のです。そんな土地で過ごしていると、スレンダー&フィットとはほど遠い自分も根拠なき自信に満ち満ちてくる。体育の授業と部活動で鍛えた平均的日本人ならアメリカのピラティス教室も余裕でしょうと意気揚々乗り込んだ訳ですが、結果は惨敗でした。

 考えてみるとアメリカって、何でも重たい。車やお店のドアはちょっと引っ張るくらいではびくともせず綱引きのように全体重をかける必要があるし、掃除機もずっしりで家じゅうかけるとハーフマラソン完走後くらいに息切れするし、お鍋やフライパンはダンベルのようで初めて料理した後は筋肉痛になりました。工業製品は、日本だと高級モデルほど小型化・軽量化していきますがアメリカでは軽すぎると安っぽく思われてしまうためにあえて重量感を出しているという話も聞きます。身の回りに重たいものがあふれているので、アメリカ人は日常の中で自然に綱引きやマラソンやダンベル運動をしているようなものなのかもしれない。

 それまでは、日本人はアメリカ人よりも運動する機会が多いと思っていました。幼稚園・保育園のころから運動会があり、小学校に入学してからはプールの授業にラジオ体操、マラソン大会。中学からは本格的な部活動。こんなにも誰もが等しく運動の機会を与えられる(強制されるともいえるかもしれませんが)のは、少なくともアメリカと比べたら珍しい。アメリカにもさまざまスポーツの機会がありますが、やりたい人がやるのが基本ですから。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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体力より精神力?