丸善丸の内本店では、今回紹介した本を中心に、女王に関連する本の特設棚が組まれている(写真:丸善丸の内本店提供)
丸善丸の内本店では、今回紹介した本を中心に、女王に関連する本の特設棚が組まれている(写真:丸善丸の内本店提供)

 日差しも和らぎ、すっかり秋めいてきた今日この頃。秋の夜長にオススメの洋書を紹介したい。女王とイギリス王室にまつわる14冊をピックアップした。AERA 2022年10月24日号の記事を紹介する。

【写真】ピックアップした14冊はこちら

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 先月8日、96歳で亡くなったエリザベス女王。史上最長の70年の在位期間を誇った女王の生涯を振り返る本や雑誌の刊行が相次いでいる。読書の秋。テーマを定めて洋書にトライしてみるのはどうだろう。

 都内随一の洋書売り場を誇る丸善丸の内本店と、本誌でもおなじみ、英王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんに女王と王室に関連する書籍・雑誌を紹介してもらったほか、女王のファッションなどが楽しめるオススメ本も編集部でピックアップした。

 丸善の売り場担当者によれば、逝去後は、女王関連本の品薄状態が続いているという。今後も回顧録などの出版が相次ぐと見られる。

 登場人物について予備知識がある状態で読み進められる伝記やノンフィクションは、小説と比べて読みやすいので、英語学習にも適していると言われる。王室関連の“頻出単語集”を予習してトライしてほしい。

■女王の歴史に触れる

 ロンドンに暮らした経験を持ち、長く王室周辺を取材してきた多賀さんは、新旧取りまぜた4冊を紹介してくれた。ウィリアム皇太子とヘンリー王子、キャサリン皇太子妃やメーガン妃といった周辺人物にフィーチャーした本も含まれる。

 多賀さんによれば、イギリスでは書店でも回顧録や伝記のコーナーが大きなスペースを占めているそう。歴史好きが多く、文学の国・イギリスならではだ。

「過去を理解せずに現在のことは理解できない、という感覚があるんでしょうね。歴史が人を作り、人が歴史を作る。そういう意識が感じられます」

 その一例がキャサリン皇太子妃について書かれた本。タイトルこそ『Kate』だが、内容の半分ほどはキャサリン皇太子妃の母・キャロルさんについてのストーリーだという。

 キャロルさんは労働者階級の出身で、鉱夫を祖先に持つ。中産階級のマイケルさんと結婚後、子ども用のパーティーグッズを扱う通販会社を立ち上げて大きな成功を収めた。築いた財産を教育費に充て、3人の子どもを名門私立校に通わせて上流階級とのネットワークを築いていく。

「ミドルトン家の家庭の歴史を描きながら、労働者階級が次第に力を持つようになったイギリス社会の変化を描いて興味深いです」

 と多賀さんは同書を評価する。

 英国民だけでなく、世界中から愛されたハー・マジェスティ。女王の歴史にぜひ原文で触れてみてはいかが。

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