AERA 2022年10月24日号より
AERA 2022年10月24日号より

■ポイントは「やや厳しめ」

 夏に実施したマーケティング戦略コースでは架空の酎ハイブランドを設定し、コンセプトや数字を示したうえでブランド戦略の立案に取り組んだ。途中、社員から「やや厳しめ」のフィードバックを行うことで学生の本気を引き出し、成長と質の高いアウトプットにつなげるという。同社のインターンは学生の評価も高く、就活サイトが口コミをもとに行った調査では掲載約4万5千社のうち10社だけの最高ランクの評価を得た。

 また、日本郵政では日本郵便と合同で3日間のインターンを夏から秋にかけて計12回実施する。合計480人が参加する大規模なものだ。そのほかのプログラムを含めると、延べ1千人近くを受け入れる。人事部の池辺恭平さんは言う。

「日本郵政グループは企業名こそ多くの方に知っていただいていますが、各社にどんな社員がいて、どんな仕事があるかはあまり知られていません。実際に社員と接し、仕事を体験することで、日本郵政グループで働くことへの『解像度』を上げてもらいたいと考えています」

 3日間のプログラムのなかでは、実際に同社の各部署で行う職場体験が人気だ。数人のグループに分かれて各部署に「配属」され、社員とともに事業課題についてディスカッションしたり、施策を考えてプレゼンしたりする。これだけの人数を受け入れ、満足感あるインターンを実施するには、人事部はもちろん各部署の負担も少なくない。

「その価値はあると思っています。インターンに参加せずに内定を得る学生も大勢いますが、インターン経験者は内定辞退や入社すぐの退社などのミスマッチが少ないと感じます。インターンを通して事業内容を深く理解いただけている結果だと思っています」(池辺さん)

 こうした就業体験やフィードバックに力を入れる企業のインターンは学生の人気が高い。上智大学既卒で24年入社に向けて就活中の押尾郁弥さんも、実践的な課題に取り組めたインターンを高く評価する。

「大手製薬では、2週間かけてグループでウェブCM制作に取り組みました。マーケティング部の社員からフィードバックをもらいつつ実践的に学ぶことができた。優秀作品は実際の広告に使われることになっていて、とてもやりがいがありました」

 一方、酷評されるインターンも。ある玩具メーカーのインターンは、オンライン通話アプリZoomの「ウェビナー」機能を使って行われた。ウェビナーは講演会など多数の参加者に向けた一方的な発信に使う機能だ。参加した学生はこう振り返る。

「苦労してESを書いたのに会社説明会となんら変わりがありませんでした。質問しながら深く話を聞きたいと期待していた分、残念です」

(編集部・川口穣)

AERA 2022年10月24日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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