日本大学が開く合同企業説明会。学生は参加予約するときに、目的を書くのが必須(写真:日本大学提供)
日本大学が開く合同企業説明会。学生は参加予約するときに、目的を書くのが必須(写真:日本大学提供)

 2022年3月卒の各大学の就職状況が出そろった。コロナ禍の影響はいまだに残っている中でも、理系就職に強い大学ではどんな支援をしているのだろうか。キャリアサポートの現場を取材した。AERA 2022年10月24日号の「大学」特集の記事を紹介する。

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 理系企業に強い大学を見ていこう。日本大学はスズキに16人、三菱電機に17人、NECに14人を送り出している。同大学生部事務長の野口眞一さんは言う。

「『理系の業界に強い』と言うよりも、OB・OGがその社内で活躍して結果を出し続けた結果、伝統的にそうした会社への採用が多くなりました。同窓会組織も各地、各社にありますから、先輩たちの面倒見のよさが功を奏しています。『日大出身』とわかれば、例えキャンパスが違っても、打ち解けられます」

 理系学部が充実しており、研究室と企業が共同研究するつながりで就職する学生も多い。

 ただ、同大の強みは先輩とのつながりにとどまらない。21年度にキャリアサポートの仕組みを進化させ、例えば1年生の入学ガイダンスからすでにキャリア教育について説明する時間を取っている。

 同大独自の合同企業説明会にも仕掛けを作った。参加するには今年から「目的」を詳しく書かなければ予約できないようにしたという。

「従来は理系企業への就職は理系学生が多かったのですが、企業が多様な人材を求めて、文系の学生の入社枠を増やしているケースがある。そういったことも学生たちに周知していきたい」(日本大学・野口さん)

 東海大学も大和ハウス工業に8人をはじめ、理系企業への就職が目立つ。近年、大学改革を行い、さらなる就活支援に乗り出している。

 23学部を有する総合大学だが、以前はキャリア就職センターが一つ。もっときめ細かい対応をできないか。そこで編み出されたのが分野の近い学部をまとめた「カレッジ制」だ。本年度、本格的に走り出したこの制度は、全学同一のキャリア支援ではなく、カレッジごとに支援を展開。担当職員は、キャリア就職センター時代の数十人から、カレッジでは兼務も含め約100人に増員となった。

 同大のキャリア教育を担当する成川忠之教授は言う。

「カレッジ制の目的は学生に対するワンストップサービスだったのですが、学生と接する教職員の距離が近くなって、より指導しやすくなる効果が生まれました」

 文系の就職指導は、学生の適性に応じた職種や業種を掘り起こすところからはじまるが、理系学生の場合、大学で身につけた知識や研究内容を企業の採用担当者にどう伝えるか、志望動機を練ることが重要だという。全学を見るキャリア就職センターの職員ではなく、理系の就職を熟知したカレッジの職員が指導したほうが適切なアドバイスができるというわけだ。(編集部・井上有紀子)

AERA 2022年10月24日号より抜粋