失くしてわかる「雑談」という生活の潤滑油(イラスト:サヲリブラウン)
失くしてわかる「雑談」という生活の潤滑油(イラスト:サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 シンガー・ソングライター、ジョニ・ミッチェルの名曲「ビッグ・イエロー・タクシー」のなかに「失うまで大切さはわからない」という歌詞があります。頭では理解していたものの、あるものを失って初めて、大切さを痛感した経験が私にもあります。

 さて、TBSラジオ仲間でありフリーアナウンサーでもある堀井美香さんとやっている、「OVER THE SUN」というポッドキャスト番組。中年女ふたりがテーマも決めず、だらだらと横滑りするおしゃべりを続けるだけの番組ながら、世の中には親切で奇特な人が多いのか、どんどんリスナーが増えていくという、不思議な経験をしています。

 先日、ようやく番組の有観客イベントを行うことができました。場所は銀座のヒューリックホール。昔は映画館だったところですね。コロナ禍に入ってから始まった番組なので、いままで互助会員(リスナーさんの呼称)と集まることができなかったのです。

 それにしても、配信開始から2年以上の月日が経過したなんて。思い返せば、なかなか先が見えず、毎日を騙し騙しやり過ごしていくしかない日々でした。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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