光明寺の「神谷町オープンテラス」。店長で僧侶の木原祐健さんは「都心のお寺が場を開放することで皆さまに貢献したい」と話す/東京都港区(撮影/編集部・古田真梨子)
光明寺の「神谷町オープンテラス」。店長で僧侶の木原祐健さんは「都心のお寺が場を開放することで皆さまに貢献したい」と話す/東京都港区(撮影/編集部・古田真梨子)

 過疎化で集落や檀家が減り、危機感を覚える寺が増えている。こうした状況を重く見て、寺に縁がなかった人にも、身近に感じられるような取り組みを行う僧侶も少なくない。AERA 2022年10月24日号の記事を紹介する。

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 国際比較調査グループ(ISSP)が19年に発表した「日本人の宗教意識についての調査」によると、「宗教を信仰している」割合は36%。08年から2ポイント下がり、もともと低いとされる信仰心はより減少傾向にある。また、過疎化で集落や檀家(だんか)が減り、危機に瀕(ひん)している寺院や神社が増えている。

 その動きはコロナ禍以降、加速しているという。伝統仏教の各宗派など105の加盟団体でつくる全日本仏教会(事務局・東京都)の「仏教に関する実態把握調査報告書」(21年)によると、菩提(ぼだい)寺が「ある」人で毎年「お盆」法要を行っている割合は、コロナ禍前は50.3%だったのが、21年夏には30.4%に。コロナ禍収束後に法要を行いたい意向がある人は42.4%にとどまるとみられるという。

「若手僧侶はみな、やばいなと思ってますよ。お寺が衰退していく危機感があります」

 と話すのは、京都府久御山町にある月仲山称名寺の副住職、稲田瑞規さん(30)。全国の若手僧侶が宗派を超えてつくっているフリーペーパー「フリースタイルな僧侶たち」(フリスタ)の3代目編集長でもある。

 称名寺に生まれ、小学校の卒業文集に「お坊さんになりたい」と書いた。しかし、大学生になり、修行に行く段階になると、

「この堅苦しい世界で生きていく自信がなかった。広告業界などへの興味も出てきていたので、自分のアイデンティティーがわからなくなって悩みました」

 そんなとき、父親からフリスタの存在を教えられたという。

「文字通り『フリースタイルでいいんだ!』と。僧侶の幅の広さを教えてもらいました」

 と編集部に参画した。今年4月に発行された最新号の特集は「BIG LOVE」。「アイドルと推し活の構造は宗教と類比的だ」という巻頭言から始まり、タレントのでか美ちゃんが「推し」について熱く語るという斬新さだ。伝えたかったのは、仏教の普遍的なテーマの一つである「大きな愛のあり方」だ。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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