弾道ミサイル発射訓練を現地指導する金正恩朝鮮労働党総書記=朝鮮通信
弾道ミサイル発射訓練を現地指導する金正恩朝鮮労働党総書記=朝鮮通信

 北朝鮮が9月25日から10月9日までの2週間で計12発のミサイルを発射した。4日のミサイルは日本上空を通過し、約4600キロ飛行した。朝鮮中央通信は10日、戦術核運用部隊の軍事訓練などを行ったと明らかにした。AERA 2022年10月24日号の記事を紹介する。

【写真】朝鮮人民軍戦術核運用部隊の弾道ミサイル発射訓練の様子はこちら

*  *  *

 日本政府関係者の一人は、一連の北朝鮮の動きについて「7回目の核実験に向けた準備行動だ」と指摘する。日米韓によれば、北朝鮮北東部の咸鏡北道豊渓里にある核実験場では、未使用の第三坑道の復旧工事が完了し、新たな第四坑道の掘削が進んでいる。

 米国の科学国際安全保障研究所(ISIS)のデビッド・オルブライト所長は核実験について「弾道ミサイルに水爆を搭載するため、追加の実験を必要としているのかもしれない」と語る。同時に「北朝鮮は短距離で使える戦術核兵器を開発すると示唆している。この戦略を信頼できるものにするため、さらに多くの核兵器を開発する可能性が高い」とも述べ、様々なタイプの核実験を複数回行う可能性があるとの見方を示す。

 日米韓は8月下旬ごろから、北朝鮮内で大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射する動きをつかんでいる。専門家の仮説やこうした情報を総合すると、北朝鮮は今後、ICBMやSLBMを発射した後、核実験に踏み切る公算が大きい。

■17年と三つの違い

 北朝鮮の前回実験は2017年9月だった。当時と現在では、三つの点で違いがある。

 第1は、北朝鮮の急速な技術発展による脅威の深刻化だ。

 前回でも、北朝鮮は核実験の前に様々なミサイルを発射したが、当時の発射は開発実験の側面が強かった。北朝鮮は17年3月に新型の液体型「白頭山エンジン」を開発。同年5月にこのエンジンを搭載した新型中距離弾道ミサイル「火星12」を発射した。北朝鮮は6回目の核実験直後にも「火星12」を発射したが飛行距離は約3700キロだった。火星12の目標とみられるグアムの米軍基地は、朝鮮半島から3400キロほど離れている。17年当時は、グアムに到達するかどうかという技術水準だった。ところが、今年10月4日は飛距離が4600キロと技術の向上をうかがわせた。

次のページ