「スペンサー ダイアナの決意」/ダイアナ元妃が人生の決断をした3日間を描いた劇映画。クリステン・スチュワートの演技が見事だ。10月14日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開(photo Pablo Larrain)
「スペンサー ダイアナの決意」/ダイアナ元妃が人生の決断をした3日間を描いた劇映画。クリステン・スチュワートの演技が見事だ。10月14日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開(photo Pablo Larrain)

 ダイアナ元妃の没後25年を迎えた今年、クリステン・スチュワートが主演する映画「スペンサー ダイアナの決意」が公開される。36歳で生涯を閉じた彼女の物語が、我々に問いかけるものとは。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。

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「スペンサー ダイアナの決意」のパブロ・ラライン監督は、アイコンであるダイアナ元妃(以下、敬称略)を「人間」として見つめ直す。

 映画は1991年、エリザベス女王の私邸にダイアナが招かれるシーンから始まる。チャールズとの関係が崩壊するなかで、彼女は母として、またプリンセスとしての重責のはざまで苦悩する。クリステン・スチュワートの渾身の演技が見ものだが、その手助けをしたのが、イギリス在住のヘアメイクデザイナー・吉原若菜さんだ。膨大な写真や映像を分析し「ダイアナ」に迫っていったという。

「パブリックな存在として社会に出るときの彼女のヘアメイクは本当に完璧です。ランニング中やジム通いをしているときの写真も多く、自分の体形をすごく気にされていらっしゃったのだなとあらためて思いました。でも子どもたちと旅行に行ったときの写真などは髪の毛もくしゃくしゃで、メイクもナチュラル。『ああ、やっぱりお母さんなんだな』と、うかがい知ることができました」

「スペンサー ダイアナの決意」photo Claire Mathon
「スペンサー ダイアナの決意」photo Claire Mathon

■人間らしい姿を描く

 ラライン監督は本作で“個人”としてのダイアナを描こうと考えていた、と吉原さんは話す。

「人間らしい彼女を描くことで観る人がより共感できるのでは、と監督は話していました。オフィシャルなダイアナよりも崩れていて、儚くて、人間らしい。そんな表現をヘアメイクでも目指しました」

 俳優をダイアナそっくりに見せるのではなく、俳優のなかのダイアナを引き出そうとしたという。たしかに“似せている”わけではないのに、この映画からは俳優クリステン・スチュワートの存在がどこにも感じられないほど見事だ。

 私邸で3日を過ごした彼女は、ある決意をしてそこから旅立つ。彼女の心境の変化にあわせるようにヘアメイクも少しずつ柔らかくなっていく。

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