145円台の為替相場を表示するモニター=9月22日午後5時3分、東京都港区
145円台の為替相場を表示するモニター=9月22日午後5時3分、東京都港区

 日米の金利差の拡大から進んだ「円安」の評判がすこぶる悪い。物価高を招く悪者だと政府は円安阻止に動いたが、「円安」はそんなに悪いことなのだろうか。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。(全3回の2回目)

【図表】過去にあった主な為替介入の事例はこちら

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 過去に比べて円安メリットが減っていると言われている。欧米との貿易摩擦が起きた1980年代から90年代初頭に比べて現在は、海外での現地生産や海外からの部品調達の比率が増えている。そのため円安効果が減少しているというのだ。また輸入に頼るエネルギーなどの資源や食料品の高騰が円安メリットを減殺する。

AERA2022年10月10-17日合併号より
AERA2022年10月10-17日合併号より

 しかし、経済学の標準的なモデルではそれでもなお日本経済をトータルに見れば円安メリットがあるということなのだ。日銀の黒田東彦総裁もこの夏の参院選前まで「円安は全体としてはプラス」という考え方を示していた。

 それは最近の企業業績をみても裏付けられる。2022年3月期決算はコロナ禍にもかかわらず上場企業の3割が最高益を記録した。上場企業全体では4期ぶりに最高益を更新した。

 昨年春以降に各国でロックダウンが解除されはじめ、需要が膨らんだことと円安が輸出企業の利益を押し上げたためだ。この春以降に円安がさらに進行したので、足元の好調ぶりは続いている。

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安井孝之

安井孝之

1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

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