参列者に渡された小冊子には、安倍晋三元首相の写真と「夢」の文字が(撮影/編集部・福井しほ)
参列者に渡された小冊子には、安倍晋三元首相の写真と「夢」の文字が(撮影/編集部・福井しほ)

 世論を二分したまま、国葬が終わった。首相経験者の国葬は55年ぶり、戦後2例目だ。当日の「分断の現場」を取材した。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。

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安倍晋三元首相の国葬。218の国・地域・国際機関からの要人を含む4千人超が参列した=9月27日、東京都千代田区の日本武道館
安倍晋三元首相の国葬。218の国・地域・国際機関からの要人を含む4千人超が参列した=9月27日、東京都千代田区の日本武道館

 安倍晋三元首相の「国葬」が9月27日、東京都千代田区の日本武道館で執り行われた。国内外から4183人(政府発表)が参列。会場は黒一色に染まった。式は4時間以上続いた。

「テロが怖くて迷ったけれど、安倍さんを見送りたかった」

 参列した60代女性は、招待状を握りしめながらそう打ち明けた。女性はかつて、安倍元首相が議長を務めた会議に有識者として参加。複数回、席をともにした。安倍元首相を「他の政治家にはないオーラがあった」と懐かしむ。直接会話を交わしたことはなく、今回の参列を「繰り上げ招待」だと話す。

会場には安倍元首相の功績がわかる写真が飾られていた(撮影/編集部・福井しほ)
会場には安倍元首相の功績がわかる写真が飾られていた(撮影/編集部・福井しほ)

「国葬に参加するかどうか電話がかかってきたんです。『行きます』と返事をしたら、招待状が届きました。でも、ほら」

 そう言って、女性は招待状の住所部分を指した。名前は封筒に印字されているが、住所や女性の肩書は上から貼り付けた紙に書かれている。改行もされておらず、読みづらい。女性は小さな声で、こうこぼした。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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