photo (c)Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., 
G.H.Y. Culture & Media (Singapore).
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 舞台はSARSが猛威を振るった2003年の台湾。米国から母と妹と帰郷した13歳の思春期の少女が、乳がんを患った母とぶつかりながらも成長していく──。連載「シネマ×SDGs」の23回目、本作が長編デビューとなるロアン・フォンイー監督の半自伝的映画「アメリカから来た少女」は第58回金馬奨で最優秀新人監督賞、観客賞など5部門を受賞。本作で母親を演じたカリーナ・ラムに話を聞いた。

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 2人の娘の母親で、乳がんを患うリーリーを演じました。演じるにあたって一番難しかったのは、実際に乳がんの手術をした人が日々をどのように過ごしているのか、それを演技でどう表現していくかということでした。

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G.H.Y. Culture & Media (Singapore).
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 私はいろんな人を観察し、取材して役作りをすることがとても好きです。今回は2人の乳がん経験者と看護師長をなさった方にお話を伺いました。皆さん私を信頼して、隠すことなくお話しくださいました。それはとても心に沁み、役作りにとても役立ちました。

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G.H.Y. Culture & Media (Singapore).
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 例えば、手術をして7日後に退院した時はどういう感じなのか。撮影では実際と同じように傷口にしっかりと包帯を巻いていたので、シャワーを浴びるにしても、呼吸がすごく浅くなってしまい、非常に苦しい。呼吸が浅いと動作もつらい。全編を通して感じたのは、そのような息苦しさやつらさといった、肉体的な不自由さでした。

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G.H.Y. Culture & Media (Singapore).
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 本作はSARSが蔓延していた頃の話ですが、撮影はちょうどコロナの感染が爆発しそうな時期だったんです。そのため、香港で色々と準備した後、(撮影地の)台湾で2週間の隔離が必要でした。その間、誰とも会わない、話をしないというのは、私にとって人生初の経験です。この経験が撮影にそのまま影響したと思います。

カリーナ・ラム(出演)Karena Lam/1978年8月生まれ。2002年、「男人四十」で香港電影金像奨最優秀新人賞などを受賞。香港に拠点を移し多数の映画に出演。10月8日から東京・ユーロスペースほか全国順次公開(写真:A PEOPLE CINEMA提供)
カリーナ・ラム(出演)Karena Lam/1978年8月生まれ。2002年、「男人四十」で香港電影金像奨最優秀新人賞などを受賞。香港に拠点を移し多数の映画に出演。10月8日から東京・ユーロスペースほか全国順次公開(写真:A PEOPLE CINEMA提供)

 コロナの感染状況がどうなっていくのか、どう防げばいいのかもよくわからない状況でしたから、映画を撮りながら「もしかしたらこれが私の最後の一本になるかもしれない」と思いながら演じていました。ですので2人の娘役、ケイトリン・ファンとオードリー・リンに対しても本当に誠意を持って向き合いました。そんな経験があったからこそ、すべてのことを抱きしめたくなる映画になったんだと思います。(取材/文・坂口さゆり)

AERA 2022年10月10-17日合併号