2022年6月5日、在位70年を祝うプラチナ・ジュビリーで、バッキンガム宮殿のバルコニーから国民に手を振るエリザベス女王(写真・ロイター/アフロ)
2022年6月5日、在位70年を祝うプラチナ・ジュビリーで、バッキンガム宮殿のバルコニーから国民に手を振るエリザベス女王(写真・ロイター/アフロ)

 エリザベス女王の国葬が9月19日、ロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われる。70年にわたって君主を務め、国民から敬愛された女王。その喪失感はとてつもなく大きい。AERA 2022年9月26日号の記事を紹介する。

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 英国のエリザベス女王が96歳で亡くなった。スコットランドのバルモラル城で9月8日、安らかに息を引き取った。

 昨年4月、70年以上寄り添った夫エディンバラ公を失ってからは、気力が衰えたのではないかと心配されていた。今年2月にコロナに感染、3回のワクチン注射が効いて軽症だったと言われたものの、その後「すごく疲れるのよ」と周囲に漏らしていた。それでも気丈に日々の公務をこなすため命を燃やし続けた。

 6月のプラチナ・ジュビリー(在位70周年の記念式典)では、バッキンガム宮殿のバルコニーで歓呼の声に応えたが、国民の前に姿を見せたのはそれが最後になった。9月6日には、在位中15人目に当たるトラス新首相(47)を任命、組閣の依頼を行った。満面の笑みで新首相と握手したものの、手の甲の青さが目立ち不安をかきたてた。医師団が、「女王の健康を不安に思う」と発表したのは、それからわずか2日後。その午後に亡くなった。最初に死去を知らされた首相が、第一報を受けたのは同日の午後4時半だった。

■涙を浮かべた新国王

 死の直前の公務が15人目の首相任命とは生涯現役を体現する、との称賛の声もある。一方で、喪失感は大きく、バッキンガム宮殿などに人々は花束を手向けに足を運んだ。

 ただ、継承に空白期間は許されない。すぐにチャールズ皇太子(73)がチャールズ3世国王に就き、カミラ夫人(75)は女王の遺言通りカミラ王妃に、ウィリアム王子(40)が皇太子、キャサリン妃(40)が皇太子妃と称号が格上げ、ジョージ王子などもそれぞれ継承順位が一つずつ繰り上がった。

 この度、チャールズ国王は、何度涙を浮かべただろうか。母をみとってからロンドンに帰り、バッキンガム宮殿に向かう国王の目に涙が光った。車から降りて人々と握手して言葉を交わしたが、手にキスをして国王をたたえる女性の姿もあった。まず国民と触れ合った姿勢を評価された。国歌は「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」の「クイーン」を「キング」に替えて歌う人もいて、新国王の人気は低くない。

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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