――ライブをはじめ、人と交流することで、「エネルギーの交換」をしているという。

Taka:例えば5万人を超えるオーディエンスがいるライブもあって、そのオーディエンスがまとまって僕ら4人に対して解き放つエネルギーというのは凄まじいものがあるんです。僕たちはその大切なパワーをまずはインプットして、またオーディエンスに返す、そういう循環がある。

■人に近づくことは大切

Taka:ライブは、僕らにとってはあふれるぐらいに水の入った風呂の栓を一気に抜くような作業。流れ出た水をみんなに使ってもらうんです。彼らなしでは僕らは成立しません。

 ただ、時には人から離れたほうがいいんじゃないかと思うこともあります。いろいろな人を愛して、いろいろな人に対して平等で接することを積み重ねる中で、時に自分が病んでしまう感覚に襲われることがあるんです。そういう時は人と距離を取ります。

 でも、そこから今度は「人と触れ合うってどういうことだっけ?」というところに帰っていく。コロナ禍になって人と距離を取らなければいけなくなったことで、人に近づくことの大切さがわかりました。だからこそ、伝えられるメッセージもあります。その変化は僕自身にとって大きかったですね。

――ターニングポイントを尋ねた。二つあるという。ひとつはライブ活動をストップせざるを得なくなったコロナ禍と、もうひとつはONE OK ROCKを結成した時だ。

Taka:バンドを始める前の自分は、人を信頼したり、人との距離を縮めたりすることをしてきませんでした。でも、ギターのToruにしつこくバンドに誘ってもらったから、今ここにいます。ONE OK ROCKに入って人との距離感も大きく変わった、人生の大きな転機だと思います。

――日本とアメリカを往復する生活を選んだのはなぜだろうか。

■常に自問自答している

Taka:自分がなるべくストレスを抱えずに勉強ができるように、よいペースで一歩一歩進んでいくためというのが大きいです。日本の文化に触れてそれをアメリカに持っていくことも大切ですし、アメリカの文化を確認していくことも大切。今の生活スタイルはバンドがどうこうというより、自分自身の生活を豊かにするためのものですね。

――世界への挑戦を続ける中で、達成感を感じた瞬間はあるのか。そう尋ねると、「達成感を感じたら、僕ではないと思います」と笑った。

Taka僕は自分に才能があるなんて、これっぽっちも思っていない。だから、日々が挑戦です。ただ、歌については親からもらった才能と呼んでもいいとは思っていて、大切に使いたいとは思っています。貴重なものを背負って生きているのであれば、すべてを使い切りたい。時間はお金では買えないですよね。人生はあっという間に終わってしまうと思うんです。限りある時間をどう使うかは常に自問自答しています。だから、僕が達成感を感じるということは今までもこれからもないと思っています。

(ライター・小松香里)

AERA 2022年9月19日号