元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】稲垣さんが銭湯の常連さんからおすそ分けでもらったゴーヤ

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 今夏蚊にあまり遭遇しなかったのは気温が高すぎたせいなのだろうか。なぜか9月に入り蚊に刺されることが増えた。足などに違和感を感じふと見れば、皮膚があのおなじみの、ぽっちり赤く膨れた可愛らしい感じになっている。

 でも今の私にとってそれはただそれだけのこと。アラ大変とか、勘弁してよーとか、痒み止め買おうなどと思うこと一切なし。「あ、刺された」。以上。で、すぐ忘れる。すると痒みもすぐ消え、掻かないので腫れも瞬時に引っ込み跡も残らない。全ては何事もなかったように元通り。

 このような素晴らしい蚊対策を始めてもう何年も経つのは、どう考えてもこれがベスト対処法だからだ。だってただ「忘れる」だけで全て解決。となれば、刺される前も後も含め、蚊に悩まされる時間そのものが消えた。その分ストレスが確実に減り人生が確実に明るくなった。

 ってことで、このすごい発見を独り占めするのもどうかとこれまで多くの人に伝えてきたが、「精神論じゃん!」と笑ってはくれるが実行しようと言ってくれた人はゼロである。一体なぜなのだろう。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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