大宮エリーさん(左)と倉本聰さん/photo 本人提供(大宮エリー)
大宮エリーさん(左)と倉本聰さん/photo 本人提供(大宮エリー)

 作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。6人目のゲストは、脚本家・演出家の倉本聰さんです。

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*  *  *

倉本:東大っていっても俺、全然行ってないからねぇ。俺でいいの?

大宮:はい! で、大学ではなくどちらへ?

倉本:「ルオー」っていう喫茶店、知ってます?

大宮:ルオー?

倉本:赤門を出て、ちょっと左行ったところにあって、ルオーの絵をいっぱい飾ってある店です:むしろそっちへ行ってましたね。

大宮:文学部美学科だからです?

倉本:いや、それはまた別で。(3年生で)駒場から本郷に移るときに、成績によって決められるでしょ。

大宮:はい。

倉本:仏文に行きたかったんだけど、成績が悪くてダメで。お前の成績で行けるのは、インド哲学か考古学か美学って言われて。

大宮:あら意外。

倉本:美学って何をするところかも全然分かんなくて。でも美っていう字がついてるし、何となくその中ではいいんじゃねえかと思ってですね。

大宮:(笑)。

倉本:そうしたら、似たようなやつばっかり集まってて、吹きだまりのような場所だったんですよ。

大宮:ルオーでどういう話を? 政治とか?

倉本:いやいや、政治の話はしませんね。映画の話とか、芝居の話とか。

大宮:その時点からお芝居を。

倉本:そうです。ギリ研ってのがあったんです、東大に。ギリシャ悲劇研究会。のちに東映の映画監督になる中島貞夫ってやつが親友だったんで、彼とやろうってことに。

大宮:ギリ研では何を?

倉本:ギリシャ劇のこと研究して、やるんです。日比谷野外音楽堂でやったんですよ、「オイディプース王」。

大宮:在学中に脚本は?

倉本:教養学部のときに芝居を一本書きましてね。で、中島が一本書いて、中島のを僕が演出して、僕のを中島が演出して上演したんですよ、駒場祭でね。そうしたら学生新聞から呼ばれて、駒場でものを書いてるやつを3人集められて鼎談(ていだん)やれっていう話で。集まったのが一人がすごく感じのいいやつで、一人はすごく感じの悪いやつで。感じのいいやつが柏原兵三っていう、のちに芥川賞取ったやつで、感じの悪いほうは大江健三郎っていうやつでした(笑)。

大宮:(笑)。

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