被害者非難が起きるのは、ネットの世界だけではない。無意識に被害者を追い詰める言葉が、日常にはびこっている。

 例えば、よくある会話。

「実は、深夜に一人でクラブに行ったら、知らない男性に付きまとわれて、危なかったんだ」

 と女性が明かす。それに対して友人がこう言う。

「も~そんな時間に、そんなところに一人で行っちゃだめ!」

 齋藤准教授によると、こうした会話も、被害者非難の一つである可能性があるという。

■同意ない性行為は暴力

 もちろん、実際に存在する危機に対して注意を促す言葉であり、防犯として重要な視点だ。ただ、嫌な目にあったことを打ち明けた被害者に対して、相談相手の第一声が「だめ」だと、被害者を追い詰めかねない。悪いのは加害者のはず。その前提が抜け落ちて、被害者の落ち度を責めてしまうからだ。

「どんな場所にいても、その人の同意なく性的な行為に及んだとしたらそれは暴力で、暴力は振るう側が悪いのです。心配で相手を怒りたくなったら、そうしたことを認識することが大切だと思います」(齋藤准教授)

 では、誰かが自分に対して被害を打ち明けてくれたらどうすればいいのか。齋藤准教授によると、受け止めるポイントは主に四つだ。(1)信じてしっかりと話を聞くこと、(2)責めないこと、(3)現実的に助けになることがあるかを尋ねること、(4)どこか相談機関につなぐこと。

「以前、調査にご協力くださった方の多くが、相談した相手から『それは大変なことで、あなたは暴力を受けたんだ。だから、ちゃんと相談しよう。不安だったら一緒に行くから』と言葉をかけられたことが助けになった、と話していました」(同)

(編集部・井上有紀子)

AERA 2022年9月19日号より抜粋