シブヤ代表、5ツ星お米マイスター・澁谷梨絵(しぶや・りえ)/1977年生まれ、千葉県出身。米屋の3代目。大学卒業後、システムエンジニアを経て2001年からシブヤ代表。「米処 結米屋」を松屋銀座店などで展開。テレビ出演のほか、著書多数(photo 写真映像部・東川哲也)
シブヤ代表、5ツ星お米マイスター・澁谷梨絵(しぶや・りえ)/1977年生まれ、千葉県出身。米屋の3代目。大学卒業後、システムエンジニアを経て2001年からシブヤ代表。「米処 結米屋」を松屋銀座店などで展開。テレビ出演のほか、著書多数(photo 写真映像部・東川哲也)

 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2022年9月12日号には、シブヤ代表の5ツ星お米マイスター、澁谷梨絵さんが登場した。

【写真】365日「Tシャツ」の経営者

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 今でも思い出す光景がある。東日本大震災の翌日、自店が入るデパートの入り口には大勢の人がいた。開店と同時にそのほとんどが、自分の米屋に殺到、あっという間に売り切れた。

「米屋って、大切な仕事だったんだ」

 消費者に米を届けることに一生をささげると決意した。

 大学卒業後、SEとして多忙な日々を送っていた。米屋の父親が病に倒れ、なんとなく後を継いだ。父親の仕事ぶりは子どものころから見ていたが、特に思い入れがあるわけではなかった。ただ、ネットで何でも買える時代に、わざわざ米屋に足を運んでもらうには、このままではいけない気がしていた。

 腹をくくってから強くなった。いい米をつくる農家があると聞けば、売ってもらうために車を飛ばした。若さのせいか米屋と信じてもらえず、詐欺師呼ばわりされたことも一度や二度ではない。「あんたに何がわかる」と軽んじられても、田んぼの作業を手伝った。人並み外れた行動力で、確実に各地の農家の信用を勝ち取っていった。

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