3月24日、シドニーで行われたアジア最終予選9戦目。オーストラリア代表に勝利しW杯本大会出場を決めた日本代表の選手たち
3月24日、シドニーで行われたアジア最終予選9戦目。オーストラリア代表に勝利しW杯本大会出場を決めた日本代表の選手たち

 本大会への出場枠をめぐり、各国がしのぎを削ってきたW杯アジア予選。2026年大会ではアジア枠がほぼ倍増する。どんな影響があるだろうか。AERA 2022年9月12日号より紹介する。

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 サッカー・ワールドカップ(W杯)のアジア予選が、大激変する。8月1日、アジアサッカー連盟は、アメリカ・カナダ・メキシコが共催するW杯2026年大会の予選方式を発表。現在4.5チームが本大会へ進めるアジア枠(0.5は大陸間プレーオフ)が、8.5に増枠されることが明らかになった。W杯本大会はこれまで32チームで争われてきたが、26年大会からは48チームが出場する。アジア枠がほぼ倍増するのもその影響だ。

貴重な強化の場だった

 日本は、アジア枠が3.5だった1998年フランス大会でW杯初出場。その後、今年11月に開幕するカタール大会まで7大会連続で出場を決めてきた。ただし、アジア予選での戦いが常に盤石だったわけではない。アジア予選では、日本や韓国、イラン、サウジアラビア、オーストラリアといった常連国に加え、中東の中堅国、さらにはウズベキスタンや中国などの新興国が4.5枠を目指してしのぎを削る。カタール大会の最終予選では、初戦でオマーン、第3戦でサウジアラビアに敗れ、一気に土俵際に追い詰められた。その後6連勝して本大会出場を決めたが、文字通り「絶対に負けられない戦い」が続いた。一方、本大会出場枠が8.5になれば、日本にとってアジア予選は「ぬるま湯」になるだろう。

 サッカー元日本代表で、現在は解説者として活躍する福田正博さんはこう懸念する。

「活動期間が限られる日本代表にとって、フルメンバーで真剣勝負をするアジア最終予選は貴重な強化の場でした。しかし、アジア枠が8.5となれば、日本にとって予選はあってないようなものになる。強化のチャンスが今以上に失われ、世界との差はさらに広がりかねません」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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