まつお・ことみ/1985年生まれ、東京都出身。デザイン雑貨会社の海外営業とバイヤーを経て、2013年にスープストックトーキョーに入社。商品部バイヤーとして食材を求め全国を飛び回る(photo 写真映像部・東川哲也)
まつお・ことみ/1985年生まれ、東京都出身。デザイン雑貨会社の海外営業とバイヤーを経て、2013年にスープストックトーキョーに入社。商品部バイヤーとして食材を求め全国を飛び回る(photo 写真映像部・東川哲也)

 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2022年9月5日号には、スープストックトーキョーの商品部バイヤー・松尾琴美さんが登場した。

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 全国50店舗(2022年3月末時点)を展開する「スープストックトーキョー」では、毎年100種類以上のメニューが季節ごとに店頭に並ぶ。

 バイヤーとして、数ある食材の中から最適なものを見極めて、仕入れる。その重責を一人で担っている。

 年に50回以上の出張を重ねている。生産者や地域の人々から、「おいしい」との評判を聞きつけては、現地に足を運んで、自分自身でその味を確かめる。

「離島や限界集落のようなところまで、全国津々浦々に行っています。沖縄にしかないという『黄金芋』も探して行きました。レンタカーで、バスや電車も通ってない山奥の小さな農村を訪ねて、そこにしかない『伯爵かぼちゃ』を求めたこともあります」

 必ず生産者の顔を見て試食し、時には収穫を手伝うこともある。おいしいものを探す苦労は、いとわない。

「まずは、名前や人柄を知ってもらって、いろんな話をうかがう中で、生産者さんから素材のことも教わっています」

 食材探しにかける情熱は並大抵ではない。

「過去には漁師さんと漁船に乗って、揚がってきたばかりのイカをその場で神経じめして手伝ったこともあります。そうして築いた関係があるからこそ、実際に食材がスープになったものを食べてもらい、今年は出来がよかったとか、いま一つだったなど、率直な意見交換をできるようになりました」

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