AERA 2022年9月4日号より
AERA 2022年9月4日号より

■「政治家の名前を借りる必要」(仲正昌樹)

仲正:手段と言えば、選挙の応援もそうです。摂理を何としても成功させるためには、政治家の名前を借りる必要がある。その手段として選挙を応援しないといけないから、直接の見返りの少なさや費用対効果の低さはさておいても、実行する。

紀藤:政治家からすれば自分の考えを何とか実現したい、例えば「この法律には反対したい」という野望があるときに、運動を無償で手伝ってくれる数千人単位がすぐに集まる団体というのはすごく利便性が高い。いわば「財布代わり」かつ「派遣会社代わり」です。選挙での手伝いもその延長線上にある。先輩議員がそれを使っていれば新人議員も断りきれない。でも使ってみたら利便性が高い。そして関係が断てなくなっていく。

仲正:信者にとっても、ふだんは「万物復帰」と呼ばれる訪問販売や「伝道」という勧誘活動を丸一日やって、やはり行く先々でいろいろ言われるのでひどく疲れきっている場合も多いんです。それに比べれば、政治家のもとに派遣された人は「休養をもらった」くらいの感じでしょう。「この議員さんはお父様(文鮮明氏)の摂理にとって必要な人なので君に行ってもらうんだ」とおそらく言われているので、政治家にも非常に便利な存在になるだろうと思います。

 霊感商法や高額献金で稼いだお金は、日本国内の活動には最低限しか残らず、ほとんどは韓国と米国に送っているので、議員に何かしようにもお金の面ではできない。でも、従順な人材派遣だけは常にできる。お互いに切っても切れない関係が、長い年月の間にできあがっていたんでしょう。

 ただ、教団は(今回批判されて)お金の面でかなり苦しくなっているでしょうし、騒ぎが収まったとしても議員との関係復活はおそらく当面難しい。そんなに長くは持ちこたえられないのではないかと予想しています。

■「調査委員会を設置して」(紀藤正樹)

紀藤:そうかもしれません。でも、旧統一教会が「おのずから瓦解(がかい)することを待てないほどの被害」が、もう何十年もの間続いているわけです。80年代に統一教会が「霊感商法がもうかるということを発見」して全国的に広がり、月100億円のお金が集まるようになり、それが目標値になって現在に至っている。韓国には年に300億円くらいが送金されているわけですから、「日本の統一教会はもうできません」と泣き言を言える段階にはまだないでしょう。

 カルト現象というものはなぜ生まれ、どういう被害が生まれ、なぜ国が防止しないといけないのか。政府や国会は今回のことを機に調査委員会のようなものを設置して検証作業を徹底し、法的な規制も含めて「旧統一教会による家族の被害をどうするか」を解決するところまでたどり着いてほしい。

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