大宮エリーさんの立体作品「フラワーフェアリーダンサーズ」。岡山の離島・犬島の「盆踊り会場」に、巨大な草花が現れた(photo/大宮さん提供)
大宮エリーさんの立体作品「フラワーフェアリーダンサーズ」。岡山の離島・犬島の「盆踊り会場」に、巨大な草花が現れた(photo/大宮さん提供)

 現在夏会期中の「瀬戸内国際芸術祭」の開催地の一つ、犬島に画家の大宮エリーさんが巨大な立体作品を制作した。どんな思いを込めて制作したのか、大宮さんに話を聞いた。AERA2022年8月29日号の記事を紹介する。

【写真の続き】大宮さんが島の人たちと作り上げた立体アートをもっと見る(全5枚)

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 画家の大宮エリーさんの立体作品「フラワーフェアリーダンサーズ」が瀬戸内海に浮かぶ離島、犬島(岡山市)で展示されている。3年に1度、瀬戸内海の島々を舞台に開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」の参加作品として作られたもので、大宮さんは「直島に作られた草間彌生(やよい)さんの南瓜(かぼちゃ)みたいに、人が集まって楽しめる存在になれたら」と語る。

 犬島までは岡山駅からJRとバスを乗り継いで宝伝港まで約50分。さらに定期船で約7分。港からほど近くの公園に、その立体作品はある。

■島に咲く花がモチーフ

 高さ約2メートルの花のオブジェは見上げるほど巨大で、右に左にウネウネと曲がっている。モチーフになったのは、島に咲いていた姫金魚草(ひめきんぎょそう)やスズラン、キキョウ、タンポポだという。大宮さんはこう話す。

「島の道端に素朴な草花が咲いてるんですよ。地元の人が育てているのか、自生しているのかわからないけど、そうした草花が妖精になって、ダンスしているようなオブジェを作りました。この広場は盆踊りをする場所でもあるんです。地元の人が大切にしている場所で、妖精がみんなを見守っています」

タンポポに乗って遊ぶ子ども。小さな花でも、子どもの背丈ほど巨大。スズラン(上)の花は顔くらい大きい(photo/大宮さん提供)
タンポポに乗って遊ぶ子ども。小さな花でも、子どもの背丈ほど巨大。スズラン(上)の花は顔くらい大きい(photo/大宮さん提供)

 作品は目で見て楽しむだけでなく、実際に触れたり、乗ったりすることもでき、世代を超えて親しまれている。

「子どもたちが葉っぱに乗っかったり、スズランの茎にぶら下がったりして遊んでくれています。オブジェをよく見ると、テントウムシやチョウ、イモムシが隠れていたりするので、みんなで探したりして。近所のおばあちゃんも、葉っぱに腰掛けて、おしゃべりしてくれています」

 大宮さんと犬島には、今回の作品を制作する以前からつながりがあったという。数年前、建築家の妹島(せじま)和世さんに誘われて、犬島の民家の壁に草花の絵を描いた。それがきっかけで、瀬戸内国際芸術祭を運営する財団から声をかけられた。大宮さんはこう振り返る。

「財団から『直島は(アートの島として)完成しつつあるから、これからは犬島を、いい意味で日本の未来の縮図にしたい。日本の希望みたいな島にしたい』と聞いたんです」

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