(イラスト/西田ヒロコ)
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 従業員への行き過ぎたクレームや要求を行う「カスハラ」が社会問題化している。民間企業だけでなく、自治体や医療機関でも深刻だ。「現場では」何が起きているのか。厚生労働省のデータを検証しつつ、カスハラの原因と背景を分析する。AERA 2022年8月29日号の記事から紹介する。

【グラフ】この3年間で最も増えたハラスメントは?

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「セクハラ(セクシュアルハラスメント)」「パワハラ(パワーハラスメント)」などに続き、最近、取り沙汰されているのが「カスハラ(カスタマーハラスメント)」だ。カスハラとは、客が商品・サービスに対して過剰な要求を行ったり、不当な言いがかりをつけたりする悪質なクレーム行為を意味する。

 クレーマーと呼ばれる面倒な客は昔から存在したが、ここ数年でカスハラのトラブルが頻発。社会問題化し、国は対策のために動き出した。厚生労働省は2020年1月、この問題の指針(厚生労働省告示第5号)を策定。要約するとこうなる。

「カスハラに関し、事業主は従業員からの相談に応じ、適切に対応するための体制整備や被害者への配慮を行うことが望ましい。また、被害を防止するための取り組みを行うことが有効」

 カスハラという言葉が生まれたのは18年とされる。同年3月、厚生労働省の有識者会議は職場のパワハラ対策に関する報告書で「顧客や取引先からの著しい迷惑行為」について指摘。こうした行為に対する世間の意識を高めるには「カスタマーハラスメントやクレーマーハラスメントなどといった特定の名称を用いるのが有効」と説いた。

■コロナ禍で神経過敏

 事実、カスハラは増えている。「職場のハラスメントに関する実態調査(令和2年度版、厚生労働省)」でもカスハラの件数増加率が高い。

 カスハラは民間企業だけにとどまらない。公共の窓口でも被害がある。全日本自治団体労働組合が約1万4千人に実施した調査では、過去3年間にカスハラを受けたと答えた自治体や病院の職員が46%に上った。

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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