※写真はイメージ(Getty Images)
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 大丈夫なの? 財産狙いじゃない? 親の恋愛をどうとらえるか、親と子の間に軋轢も生じがちだ。漫画家・井出智香恵さんの実体験から読み解く。AERA 2022年8月15-22日合併号の記事から。

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 SNSでやりとりをしながら、見ず知らずの相手に恋愛感情を抱かせて現金をだまし取る「国際ロマンス詐欺」。今年初め、NHK BS1でその被害にあったことを告白した大物漫画家がいる。1990年代にドラマにもなった『羅刹(らせつ)の家』などの作品で知られるレディコミの女王、井出智香恵さんだ。

 2012年の映画「アベンジャーズ」でハルクを演じたマーク・ラファロを騙(かた)る詐欺師からだまし取られた金額は、3年半で約7500万円! 相手をマークだと信じ続けた井出さんの目を覚まさせたのは、長女だった。

 井出さんの“恋愛”をめぐって親と子の間に、井出さんの漫画に負けないほどの、どんなディープなドラマが展開したのか。2人に聞く前に、井出さんがあった国際ロマンス詐欺の、巧妙すぎる手口について。

 作品が外国で出版され、18年には作品の一部がグッチのデザインに使われるなど、世界との関わりも増えていた。そんな井出さんの元に、ファンだった俳優マーク・ラファロを名乗る男性からSNSのメールが届いたのは、18年のことだ。

■毎日「愛してます!」

「大ファンです! 好きです! 愛してます!というメールが毎日届くようになったんです。私の元へは外国人からあやしいメールが届くことは珍しくなかったので、しばらくは放っておいたのですが……」

 そう話す井出さんだが、メールはいつまでたっても止まらない。ためしに「オンラインで姿を見せて」と言うと、画面の向こうでしゃべっているのはマーク・ラファロ、その人!……のように見えた。

 あとからわかったことだが、実はこれ、AIを使って本物そっくりに動くニセ動画、ディープフェイク。とはいえ井出さんの作品についてもよく知っているニセのマークを、井出さんはこのあたりですっかり信用してしまったという。

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