海藻を頭に乗せたケンジ。眠っているわけでは……多分、ない/土肥美帆さん提供(以下、同じ)
海藻を頭に乗せたケンジ。眠っているわけでは……多分、ない/土肥美帆さん提供(以下、同じ)

 北海道には2人のビッグボスがいる。1人はもちろん、北海道日本ハムファイターズの監督・新庄剛志BIGBOSS。そしてもう1人、いや1匹は、御年7歳のオスケンジだ。

【かわいすぎる“ビッグボス”猫のケンジ、他の写真はこちら(計10枚)】

■2年前に小樽の浜のボスに

 ケンジは、小樽の浜の漁師小屋で生まれ、十数匹の猫たちと暮らしている。今から2年前、先代のボス猫・飛雄馬からボスの座を受け継いだ。体重8.4キロ、首回りは34センチ。まごうことなきビッグボスなのだ。

ケンジの首回りが大きすぎて日本の首輪が合わず、アメリカのファンが送ってくれたものをしている
ケンジの首回りが大きすぎて日本の首輪が合わず、アメリカのファンが送ってくれたものをしている

 8月18日、ケンジの写真集『みんなケンジが好きになる』(河出書房新社)が出版された。撮影したのは、写真家の土肥美帆さん。土肥さんにとって、『北に生きる猫』(同)から2冊目の写真集となる。

 北海道の猫を主に撮影している土肥さんがケンジと出会ったのは、2018年の冬。撮影のために猫を探していたところ、たまたまケンジの住む小樽の漁師小屋にたどり着いた。

漁師さんからニシンをもらってご満悦のケンジ。ここに住む猫は、魚を盗むことはしない
漁師さんからニシンをもらってご満悦のケンジ。ここに住む猫は、魚を盗むことはしない

■好きなメス猫に相手にされず

「初めてケンジに会ったとき、ケンジはきっこちゃんというメス猫が好きで、ずっと追いかけていたんです。でもきっこちゃんはケンジのことは興味がなくて、そっけない。大きな体で追いかけてる姿がおかしくて、思わず声をあげて笑ってしまいました」

 土肥さんはそこに住む漁師さんたちとも仲良くなり、撮影のためにたびたび訪れるようになった。でも当初の目的は、猫のきっこちゃんと、きっこちゃんを飼っていたおじいさんの撮影。お互いを思い合う一人と一匹の風景を撮りたくて、小樽へ季節ごとに通った。けれども、おじいさんは体調を崩し、そのまま亡くなってしまった。そしてきっこちゃんも、どこかへ姿を消した。

猫のきっこちゃんと、きっこちゃんの飼い主のおじいさん。もっとたくさん写真を撮りたかった
猫のきっこちゃんと、きっこちゃんの飼い主のおじいさん。もっとたくさん写真を撮りたかった

 ぽっかりと心に穴が開いてしまった土肥さんを笑顔にしたのが、ケンジだった。いつも寝ているような糸目。なのに、目を開くとちょっとドキドキするほどつぶらになる。女の子が大好きなのに、まったく相手にされないところ。大きな体に似合わず、高いかわいい声で鳴くところ。ケンジを見ると、いつも笑顔になり、自然とシャッターを押すことが増えていった。

■三枚目で優しいボス猫

舎弟のダッシュ(右)とソリに乗り込む。ダッシュは次のボスの座を狙っているようだ
舎弟のダッシュ(右)とソリに乗り込む。ダッシュは次のボスの座を狙っているようだ

 ケンジがボス猫になったとき、「あのケンジが?」とみんなでクスクス笑ったそう。体は大きいけれど、ボスの風格はなく、いつだって三枚目。そんな猫がボス?と。

「でも、ケンジが浜に行くと、ピシッとした空気になるんです。ああ、正真正銘のボスになったんだなと思いました。前のボスは、いかにもボスという感じで、あちこちでケンカもあったんですが、ケンジがボスになってから、取っ組み合いはなくなりました。たまに生意気な子がいると、高い声を出して威嚇することはあるんですが、それくらい。すごく平和な雰囲気で、みんなが優しいケンジをボスに、と求めたんだなと思っています」

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スクープ! ケンジの“朝帰り”発覚!?