東京地検の家宅捜索が入った電通の本社前には報道陣が集まった/7月26日、東京都港区
東京地検の家宅捜索が入った電通の本社前には報道陣が集まった/7月26日、東京都港区
 東京五輪での資金提供問題について、東京地検が受託収賄容疑で捜査をしている。五輪に詳しいジャーナリストの後藤逸郎さんに問題点を聞いた。AERA 2022年8月15-22日合併号の記事を紹介する。

【五輪をめぐる事件の構図はこちら】

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──東京五輪組織委員会の高橋治之元理事(電通元専務)について、大会スポンサーだったAOKIホールディングス側からコンサル料約4500万円、スポンサー料2億3千万円の賄賂を受け取った受託収賄の疑いが持たれています。高橋氏は「コンサル契約は五輪とは関係ない」と説明しているそうです。

■注目は「1業種複数社」

「組織委の役員や職員は『みなし公務員』。双方ともお金のやり取りは認めていますし(請託を必要としない)単純収賄罪は成立すると思います。国際オリンピック委員会(IOC)の倫理規程には『五輪関係者は大会に関わる報酬や手数料などを要求したり受け取ったりしてはならない』とあるので、『五輪とは関係ない』とでも言わなきゃ辻褄(つじつま)が合わないでしょう。組織委とスポンサーとの関係からすると、起こるべくして起きた事件だとも思います」

──五輪には組織委が企業からお金を吸い上げ、見返りを与える構図があると言われます。AOKI側から高橋氏に請託があったとすれば、「スポンサー契約」「公式ライセンス商品の承認」への口利きでしょうか。

「そこが根幹だと思います。大きな見返りが五輪における自社製品の独占供給です。私が注目するのは、以前の五輪における『スポンサーは1業種1社』という原則を、組織委がIOCと折衝し、東京五輪からは『1業種複数社』にしたことです」

──誰にどんなメリットがあるのでしょうか?

「IOCはもともと『1業種1社に絞ることで広告主としてのステージが高くなり、広告効果も大きい』としていました。複数社が名乗りを上げた際、契約金額をつり上げるために始めたテクニックです。それを組織委の専任代理店である電通が、1社に絞っていたら組織委への実入りが少ないからとひっくり返した。電通からしても、多くの企業と契約すれば報酬が取れる。五輪が『まずお金ありき』であることを象徴しています」

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