ヘルシンキ市内にレストランをオープンさせた吉田さん(左)。「それぞれの生き方が肯定されていて生きやすい国」だという(photo 吉田さん提供)
ヘルシンキ市内にレストランをオープンさせた吉田さん(左)。「それぞれの生き方が肯定されていて生きやすい国」だという(photo 吉田さん提供)

 人口551万の国家だが、世界幸福度ランキングは1位。フィンランドとはどんな国なのか。「機会の平等」と「国家への信頼」から読み解く。AERA2022年8月8日号から。

【データ】フィンランドってどんな国?幸福度やジェンダー平等、高齢化率などを日本と比較!

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「森に行って、さらさらのとても上質な水のきれいな湖で泳ぎ、美味しいきのこを見つけて、そのきのこで作ったリゾットを食べた。自然がそばにあって、日々がとても優しい」

 自身のツイッターにそう書きこんだのは、東京都出身の吉田みのりさん(38)。2014年3月からヘルシンキで暮らし、18年3月、フィンランド人の夫(29)と結婚。昨夏、ヘルシンキ市内にレストラン「Sake Bar & Izakaya」をオープンさせた。

 移住したのは、フィンランド航空などで働くうちに、現地の暮らしに魅了されたためだ。誰もが英語をはじめいくつかの外国語を話し、文化や映画に精通する教養の高さに惹かれた。移住後は、何より「生きやすさ」を感じているという。

「結婚や出産が絶対に踏むべき人生の通過儀礼ではないので、結婚はまだか、子どもはまだか、と言われることが一切ない」

■個性を尊重する文化

 最近、夫の姉が彼女と結婚した。ダブルワイフ、ダブルマザーも珍しい存在ではないという。吉田さんはこう話す。

「人口が少ない分、ひとりひとりの個性を尊重し、大切にしている。相手の価値観に立ち入らない文化がこの国にはある」

 国連の関連団体による世界幸福度ランキングで1位(22年)になっていることもうなずけるという。

 いま、首相として国の先頭に立つのは、19年12月に選出されたサンナ・マリン氏(36)だ。両親が離婚後、母親と同性パートナーに育てられ、4歳の女の子の子育て中。ロックフェスにショートパンツ姿で現れるなど、経歴に加えて、その立ち居振る舞いも身近な存在であり、支持率は圧倒的だ。

 だが、フィンランドでは1990年代初めのソ連崩壊以降、失業率は現在も非常に高い。最近では高齢化も進み、高齢者の孤独死もよくニュースになる。明るい話題ばかりではないのが現状だ。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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