日本記者クラブで会見をする北角裕樹さん(撮影/編集部・野村昌二)
日本記者クラブで会見をする北角裕樹さん(撮影/編集部・野村昌二)

「一刻も早い解放を望みたいと思います」

【写真】拘束されている久保田徹さん

 8月3日、フリージャーナリストの北角裕樹(きたずみゆうき)さんは、日本記者クラブ(東京都千代田区)での会見で話した。

 国軍が実権を握るミャンマーの最大都市ヤンゴンで7月30日、日本人のドキュメンタリー作家・久保田徹さん(26)が現地警察に拘束された。国軍の支配に抗議するデモの近くで撮影しているところだった。

 この日の会見は、久保田さんの仲間や友人が、彼の人柄やどのような思いで取材をしていたかを伝えるために急きょ開いた。

 北角さんは昨年2月と4月、ミャンマーで抗議デモを取材していて治安当局に拘束された経験を持つ。北角さんは、久保田さんがこの時期にミャンマーに行ったのは、いまこの国で起きていることを伝えたいという思いが強かったのではないかと言う。

「いまウクライナで戦争があって、国際的な関心がミャンマーから遠ざかっています。長くミャンマーを見てきた彼にとって、国軍の弾圧がひどくなっている中、実態が伝えられていないのはおかしいではないかという思いがあったように聞いています」

 ミャンマーでは7月下旬、民主活動家や元議員ら4人の死刑が執行されるなど、民主派への弾圧が強まっている。

 久保田さんは、慶応大学在学中からロヒンギャ難民の取材を開始し、ドキュメンタリー制作を始めた。社会の辺境に生きる人々、自由を奪われた人々に寄り添いながらカメラを向けていた。

 同じく会見した、ロヒンギャ出身で在日ミャンマー人のミョーチョーチョーさんは、久保田さんとは6年近い友人でもあり、いつも励まされてきたと話す。

「日本の政府、外務省、岸田総理にお願いしたいです。日本の力はミャンマーにとってすごく大きいです。久保田さんと一緒に捕まっている何の罪もない若者たちを早く解放するように求めてほしいです」

 久保田さんは、「刑法505条のA」の容疑で捕まっているとみられている。

 2021年2月のクーデター後に新設された法律で、デモやメディアの取り締まりに使われるようになった。フェイスブックなどのSNS上で国軍を批判するミャンマーの著名人たちも、この条項で指名手配され拘束されている。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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赤木雅子さんも会見を見守った