AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

『シティポップとは何か』は、柴崎祐二さんの編著書。山下達郎や竹内まりや、角松敏生らが1980年代を中心に日本で生み出した楽曲がシティポップとして国内外で人気を博している。その謎を音楽史と社会的背景を多層的に重ね合わせ、論じた一冊。柴崎さんに加え、岸野雄一さん、モーリッツ・ソメさんら4人が寄稿。柴崎さんに同書にかける思いを聞いた。

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 数年前から続くシティポップブーム。1980年代に日本で生まれ、煌びやかな都市生活を想起させるポップミュージックがオリジナルの再評価に加え、人気ラッパーの曲やTikTokのサンプリング素材などとして幅広く使われている。なぜ当時を知らない国内外の若い世代にも支持されているのか。柴崎祐二さん(38)が編著の本書は、ポップミュージックの系譜を縦軸に、消費行動の変化など、社会学的な側面を横軸に、複数の角度から解き明かしている。

「僕は83年生まれなので、リアルには知らないんですが、自分が生まれた前後のポップミュージックを深掘りするのが好きだったので、シティポップ的なものもわりと聴いていました。専門的な興味が出てきたのは、音楽ディレクターとしてレコード会社に勤めていた頃からです。シティポップの捉え方が人によってだいぶずれていて、定義が曖昧なことに気づいたんです。そこから資料を探したりして、言葉や音楽的な変遷を調べるようになっていきました」

 本書の元になったのは、柴崎さんが美学校のシティポップ講座のために作成した2万字にもなる講義用レジュメ。書籍化できないかとツイッターでつぶやいたところ、編集者が目に留めた。

 本書では、柴崎さんによる黎明期から衰退期を経て、昨今の再興までつながるシティポップの変遷、アメリカンポップスとの関係性、ニューミュージックとシティポップの違い、音楽業界や社会的情勢からの考察など、俯瞰的に綴られた評論が中心。それに加え、80年代を知る音楽家・著述家の岸野雄一さんなど、4人が評論を寄せている。

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