筆者の早川智医師が撮影した「いて座」
筆者の早川智医師が撮影した「いて座」

『戦国武将を診る』などの著書をもつ産婦人科医で日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授の早川智医師が、歴史上の偉人や出来事を独自の視点で分析。今回は、ギリシア神話や星好きにはおなじみのケンタウロスを「診断」する。

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 新型コロナウイルス「第7波」がなかなか終息しない。日本よりも1カ月早く流行が始まったポルトガルでは、約1カ月で急速に患者数が減少していることから日本もそうなることを期待したいが、現状では楽観は許されない。

 今回の流行はより感染性の高いBA.5株によるもので、ワクチン接種率の低い小児を中心とした流行が家庭内に持ち込まれるパターンが多い。現時点では、重症化リスクの高い高齢者において3回以上のワクチン接種が進んでいることもあって死亡者や重症者は少ないが、今後の推移を注意深く見守ってゆく必要がある。

新たな変異株

 ここにきて注目を集めているのがBA2.75。いわゆる「ケンタウロス株」である。BA.2系統の亜系統であるBA.2.75は、6月にインドで初めて報告され、インド各地から英国、ドイツ、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど各地に広がっており、日本国内からも報告が見られる。

 BA.2.75系統は、BA.2系統と比較して、スパイクタンパク質にK147E、W152R、F157L、I210V、G257S、G339H、G446S、N460Kの変異を有しており、BA.1系統、BA.2系統などで見られたQ493R変異は有さない。どういうことかというと、こういった変異がウイルスの抗原性に影響しワクチン接種による中和抗体からの逃避する可能性があるのである。

 インドではBA.2系統とその亜系統が、BA.5に置き換わっていたのが、6月以降BA.2.75系統の割合が上昇し、重症者や死亡者も増えていることが懸念されている。疫学データからはBA.2.75がBA.5よりも感染力が強いことが疑われるが、病原性が強いかどうかはわからない。

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早川智

早川智

早川智(はやかわ・さとし)/1958年生まれ。日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授。医師。日本大学医学部卒。87年同大学院医学研究科修了。米City of Hope研究所、国立感染症研究所エイズ研究センター客員研究員などを経て、2007年から現職。著書に戦国武将を診る(朝日新聞出版)など

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