「子どもが楽しくできるポイントはどこか」を見極められたことも大きかった、と女性は言う。“適度な距離”を保ちながら進めるために、親が心がけておかなければいけないスタンスとはどのようなものか。

■手を離すタイミングは

 子どもの非認知能力を育む体験イベント「ダヴィンチマスターズ」を主宰する渡辺香代子さんは、多くの親子と接するなかで「完全に放任では、子どもは伸びていかない」と感じている。

「手本を見せたり、一緒に楽しんだりと伴走しながらも、フィニッシュの手前では子どもが一人で走り出せるよう、手を離す。子ども自身が『成し遂げた』という実感を得られるよう工夫することが大切だと思います」

 手を離すべきタイミングを見極めるのが難しいが、「それは感覚的なものかもしれない」と渡辺さんは言う。

「どこで、どのように手を離すのが効果的なのかは一人一人異なる。性格などを考慮しながら、その子なりのタイミングを見つけよう、と親が努力することも必要だと思います」

 親が自由研究の当事者になってしまうのは、「目指すゴールを親の枠に当てはめているからではないか」と、渡辺さん。

「美しいものを作るのがゴールではなく、子どもが『よし、できた』と達成感を得ることこそがゴール。『人からこう見られたい』という親の価値観に当てはめるのではなく、大切なのは『過程』であると理解する。ひと夏に一つの課題に打ち込むことは、かけがえのない時間となる、とポジティブに捉えることも大切だと思います」

■日常の困りごとを解決

 都内で中学1年生の女の子を育てる女性は、娘が小学4年生の時、ワンピースづくりに並走した。女性自身、洋裁が趣味でワンピースを手づくりすることもあったことから、娘も自然とワンピースづくりに興味を持つようになっていたという。女性はまず、1カ月近い夏休みを「準備期間」「製作期間」「まとめ期間」と、スケジュールを組むことから始めた。

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