占い師、作家 しいたけ.
占い師、作家 しいたけ.

 AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。

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Q:おばあちゃんが大好きで小さい頃から毎週会いに行っています。そのおばあちゃんの娘(叔母)が、数年前に急死してしまいました。おばさんは、器用で素敵な人でした。祖母は今も悲しみにくれています。どうしたら祖母の心は癒えるでしょうか。私にできることはありますか? おばあちゃんには笑っていてほしいし、少しでも心が軽くなればいいなと思います。(女性/学生/15歳/おひつじ座)

A:家族の物語の大切な一ページを見せてもらったような気がして感動しました。

 アドバイスになるかどうかわかりませんが、「3歳作戦」をお勧めしたいと思います。

 おばあちゃんに対してどう言葉をかけてあげるのがいいか悩むのは、15歳のこの方自身が大人になってきている証拠。考えると余計に言葉が出なくなります。3歳に戻ったつもりで、「おばあちゃん元気ないの?」とか「おばあちゃん悲しいの?」とダイレクトに聞いてあげるのがいいんじゃないかという気がしました。

 人って、なかなか埋まらない傷があるとき、話しかけてもらう、問いかけてもらう時間がすごく重要です。

 大人の世界ではよく飲み屋さんなどで行われていることですが、「最近お前仕事どうよ?」と問いかけて「まあぼちぼちやってますよ」みたいなことを答える、一種の“様式美”みたいなものがある。深いことは聞いたり答えたりしなくても、相手に気にかけてもらうとすごく助けられた気持ちになるし、答えていくうちに自分で何かに気づくこともあります。

 もう一つ、大好きな人が亡くなることはとても悲しく寂しいことですが、人が亡くなった後って実はその人が生きている時よりもその人の話をすることが増えるように思います。例えば「あの人これ好きだったね」とか「これ口癖だったよね」みたいに、しょっちゅう話に出てくる。

 僕もやっぱり大好きな人を亡くしたことがありますが、そうやって話をすることで、寂しいけどなにか違った存在感を感じることができました。だから、おばあちゃんにはやっぱりたくさんおばさんの話をしてあげてほしいなと思うんです。「入学したところをおばさんに見せたかったな」とか「おばさん編み物好きだったね」みたいに。そうすることで、おばあちゃんは元気をもらえるんじゃないかな。

 残された人にできることは、大好きな人が大事にしていたことを受け継ぐことだと思います。大切な人が背中で教えてくれたこと、知らず知らずのうちに教わったこと、受け継いだことがたくさんあるはずだし、それはたぶん自分が死ぬ時まで、人生の宝物になってくれるはずです。大切な人が背中で教えてくれた、生き様みたいなもの。

 そういう生き様を受け継ぐことができたら、おばあちゃんはあなたの中におばさんの姿をまた見つけることもできるかもしれません。こんなに素敵な相談をくれたのだから、きっと自然とできているような気がします。

◎しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「VOGUE GIRL」での連載「WEEKLY! しいたけ占い」でも人気

AERA 2022年8月1日号

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しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「しいたけ. 公式サイト」では月刊占いやコラムを連載中。 https://shiitakeofficial.com/

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