そんなアメリカから居を移し、今年の夏は日本で過ごします。日本に来て驚きました。なんてたくさんの、楽しく学びにもなるような催し物が、信じられないくらいの安価で提供されているのだろう! 特に今年は、コロナ禍になって以来3年ぶりに開催されるお祭りやイベントが多いですよね。大学のキャンパスでは自由研究相談会、植物園では草花の観察会、子ども向けのコンサートや演劇、展覧会もいつも以上にあって、目移りしてしまう。全ての催し物に親子で参加したくなります。時間さえ、許せば。

 夏休みだからか、イベントは土日だけでなく平日の昼間にも開催されます。私はカレンダーなど関係ないフリーランスだからいいものの、会社員の夫は一緒に行けません。そこで土日開催のイベントを選ぶも、平日くたくたになるまで働いた夫はわざわざ人混みに行くのを好まない。というか週末は夫婦でたまった家事をしなきゃいけないし翌週に向けて買い出しや作り置きもしたいし……と、ただでさえくたくたの夫婦の足はどんどん催し物から遠退きます。イベントは親子で参加するものが大半で、特に子どもが小さいうちは必ず親が連れて行かなければいけません。

 親がちょっと頑張れば子どもを連れていける、そんな楽しみと学びの機会が目と鼻の先でぽこぽこ生まれているのに、連れていけないやるせなさ。わがやでさえこうなのだから、共働き家庭のジリジリもやもやはいかばかりかと切なくなってしまいます。夏休み中、学童や保育園に毎日通う子も多いのではないでしょうか。

 わがやの長女は、町内会主催の日帰りキャンプに参加することにしました。朝9時から夜7時まで子どもだけで過ごし、お昼ごはんも付いて参加費200円。アメリカのお高いサマーキャンプにやられた後遺症がある私は、桁がひとつかふたつ違うんじゃ? それともなにかの罠? といぶかしみながらも娘の意思を確認し、即申込みの電話をかけました。電話口で聞くと、確かに参加費は200円だそう。ただし、参加する子と保護者は事前に開かれる講習会に出席するべしとのことでした。講習会があるのは、平日の夜。私は喜んで行くつもりですが、仕事で行けないおうち、平日夜の時間が惜しいおうちもあるだろうなと思います。お金さえ出せば何でもできるアメリカと、時間さえ費やせばどうにかなる日本。果たして、どちらがいいのでしょう。

〇大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

AERAオンライン限定記事

著者プロフィールを見る
大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

大井美紗子の記事一覧はこちら