長崎バイオパークのYouTube動画「カバのスイカまるごとタイム」。1.6億回再生されている
長崎バイオパークのYouTube動画「カバのスイカまるごとタイム」。1.6億回再生されている

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、動物園や水族館の多くは休園を余儀なくされ、経営危機に追い込まれた。休業しても、動物や魚のエサ代や暖房代、水槽の電気代は変わらずかかるし、動物や魚たちの世話をする飼育員らも休めず人件費もかかる。コロナによる経営悪化を理由に、ヨコハマおもしろ水族館や京急油壷マリンパーク(神奈川県三浦市)のように閉館した水族館もある。

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 さらに、最近は物価高の影響で、エサを入手しづらくなったところもあると報道もされている。逆境の中、新時代の稼ぎ方、集客アイデアで注目されている動物園、水族館を取材した。

■カバの動画が1.6億回再生

 カバのピンク色の口の中が画面いっぱいに広がる。そこにスイカが放り込まれ、カバがまるごとかみ砕く。ガリッと大きな音を立てて、赤い果汁をほとばしらせた。

 この動画がYouTubeでなんと1.6億回も再生されている。この動画を投稿したのは、長崎県の動物園「長崎バイオパーク」だ。取締役CMOの神近公孝さんは言う。

「2014年に投稿したとき、もともとはイベントの告知動画だったのですが、数年前に『ASMR』(かみ砕く咀嚼音で心地よさを感じさせる動画)とタイトルを付けたら、海外でバズったんですね。爆発的に見られるようになって、我々も理解がついていかないような感じでした」

 では、YouTubeでの収益はというと……。

「カバの動画は正直、見た目ほどは利益につながっていないのが実情ですね。海外でたくさん再生されたのですが、国によっては広告単価がだいぶ低いのです。過去8年間で数百万円単位くらいで入ってきたんじゃないかとは思います」

■SNSが安定的な収入源に

 カバ以外の動画も好調だ。どの動画も1万回以上は再生される傾向にある。数百万回も再生される動画もある。

「YouTubeチャンネルの収益の正確な数字を公開していないのですが、カバの動画がむちゃくちゃ再生されるようになってから、日本のファンも結構ついてくれるようになりました。コロナ禍の2020年4、5月に臨時休園としたため、20年度は来園者が3割減と大きなマイナスとなりました。主な収入源は入園料ですが、SNSも安定的な収入になっています」

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パンダやライオンといったスターはいないけど