女性の息子が通う保育園は開所4年目の認可外。保護者会はあるはずもなかった。

「保育園を考える親の会」代表の渡邊寛子さんは、

「保護者会は園と保護者の橋渡し役。第三者として、客観的に意見を聞いてくれる場として重要です」

 と話す。トラブルが起きた時こそ、有効だという。前出の女性の場合は、園のコロナ対応をめぐる話だったが、福岡県の保育園では2021年夏、送迎バスに取り残された園児が熱中症で死亡、東京都では園児の「置き去り」や迷子など園児を見失う事案の報告が21年度に78件あるなど、時に重大な事故も起きる。

『ルポ 保育格差』(岩波新書)などの著書があるジャーナリストの小林美希さんは、

「重大な事故が起きる保育施設は、たいていそれ以前から何かしら気になることがある。いち保護者が言いにくいのもわかるけれど、きちんと伝えておけば防げる事故は多いと感じる」

 と指摘する。その言葉に大きくうなずくのは、都内の会社員女性(38)。長男(6)が3歳5カ月の時、通っていた私立認可保育園から散歩に行った先の公園で置き去りにされたことがある。

 園庭がなく、お散歩は日課。その日も登園後に3~5歳の園児34人、保育士4人で散歩に出かけたという。

子どもを預ける幼稚園・保育園との距離感に悩みは尽きない
子どもを預ける幼稚園・保育園との距離感に悩みは尽きない

■一歩間違えていたら

 午前11時半ごろ、お昼ごはんを食べるために保育園に向かって出発。人数確認が行われず、長男はひとり公園に残されてしまった。その後、長男は自宅までひとりで歩いて帰り、通りかかった人に保護され、警察へ。園は、午後2時ごろに警察から連絡があるまで、長男が不在だったことに気づいていなかったという。

「一歩間違えていたら、命を落としてもおかしくなかった状況だった。毎日の散歩が当たり前すぎて、どこまで人数確認をしているのか、きちんと把握できていなかった。保護者がもっと保育園に関わっていく必要があると感じた」

 そんな思いで女性は、まだなかった保護者会を立ち上げるために動き出した。当初、園側も協力的で、保護者に声をかけてくれて、各クラスから2人ずつ代表者を選んで集まることになった。

次のページ