エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 まさかの梅雨明けから連日の酷暑に突入した東京で、雨傘を日傘に持ち替えて出かけました。今やおしゃれアイテムでも気休めでもなく、熱中症予防のための命を守る道具となった日傘。私はしっかりUVカットをする遮光素材の晴雨兼用タイプを使っています。UV対策は美容のためというイメージがありますが、紫外線曝露(ばくろ)には皮膚がんや白内障などのリスクがあります。サングラスもファッションではなく白内障予防のために必須です。何よりこの酷暑。アスファルトの上を歩いていると、照り返しと直射日光であっという間に体温が上昇してしまいます。夏の外出時に日傘は手放せません。最近は男性で差している人もいますね。とはいえまだ少数派。先日、私も親交のある社会学者の田中俊之さんが「日傘は女性が差すものだから自分が差すとおかしいのではないか」という不安があって、買ったものの使えないでいたとSNSで告白していました。学生たちにきいたところ、特におかしいとは思わないという反応だったため、思い切って差してみたら非常に快適であったと。ジェンダー学の専門家である田中さんのお話だからこそ、説得力がありました。男性学を研究し、ジェンダーバイアスに詳しい田中さんでも、日傘=女性という根深い思い込みがあったのですね。今後は夏の万人必携アイテムとなるかも。

日傘は女性が差すもの。そんな思い込みにとらわれていないだろうか(写真:gettyimages)
日傘は女性が差すもの。そんな思い込みにとらわれていないだろうか(写真:gettyimages)

 ちなみに皮膚がんの罹患(りかん)率を下げるために国をあげて紫外線対策に取り組んでいるオーストラリアでは、幼い子どもの頃から、紫外線が強い時期に屋外に出るときは2時間おきの日焼け止め塗布と首筋を覆う帽子の着用が奨励されています。そしてなるべく皮膚の露出を避け、サングラスをかけること。湿度の高い日本では長袖はつらいですが、だからこそ、日傘を活用して少しでも紫外線曝露や熱中症のリスクを下げたいですね。

◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。

AERA 2022年7月18-25日合併号

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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