家事のスキルを授けてくれた母に感謝!(イラスト/サヲリブラウン)
家事のスキルを授けてくれた母に感謝!(イラスト/サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 6月とは思えぬほどの酷暑に見舞われた週末。ふと思い立ち、私は洗面所を徹底的に掃除することにしました。まずは棚から物を全部出して綺麗に拭いて元に戻し、シンクと鏡をピカピカに磨く。30分程度の作業でしたが、想像以上にスッキリ気持ちが良くなりました。

 たいていの場合、掃除や洗濯や洗い物は面倒。私は特に洗い物が嫌いです。やらずに済むならそうしたい。しかし、生きているだけでホコリもゴミも洗濯物も食べ終わったあとの食器もたまるので、重い腰を上げてやるのが常です。家事好きな人が羨ましい。

 と同時に、終わると覚醒したようにスッキリすることがあるのもこれらの作業の特徴です。毎度とはいかないけれど、水回りの大掃除以外にも、たとえば大物のシーツを洗ってパリッと乾いた時。シュモクザメの頭のような掃除機のヘッド部分に絡まったゴミを、丁寧に取り除いた時。いつもはウェットシートでサッと拭くだけの床を、しっかり雑巾がけした時。得られる爽快感や達成感は、娯楽から得られるそれらとはまた異なる味わいがあります。

 掃除のやり方は母に教わりました。私は整理整頓が上手とは言えない娘で自室はいつもごちゃごちゃしておりましたが、自室の乱れを見逃してもらう代わりに、それ以外の掃除や洗濯、洗い物は素直に言うことを聞いてやっていたっけ。毎週末に廊下の雑巾がけ、風呂とトイレの掃除、夕飯のあとの食器洗い。半年に一度の大掃除では、ベランダとカーペットが敷き詰められた階段と踊り場の雑巾がけ、などなど。母のチェックは厳しく、当時は面倒な気持ちでいっぱいでした。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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