例えば英国は法の縛りはないものの、保険会社の人、遺伝学者、倫理学者、患者、家族、行政の人たちと時間をかけ、開かれた議論を展開して政策を決めました。遺伝的に病気になるリスクが高いとわかっている人たちに高額な支払いが続けば、保険会社の経営が悪化しかねません。加入者の公平性からみても不当だと主張する保険会社の言い分にも一定の理解を示し、高額な保険商品を買う人に対しては遺伝学的検査の結果の提示を要求してよいと、現行のルールに落とし込んでいます。

 日本社会は、国全体で真正面からの議論をしないでここまで来てしまいました。日本でも、もっと目に見えるところで異なる立場の人たちが膝を突き合わせて、オープンに議論をし合えるようになるといいですよね。

(構成 ノンフィクションライター・古川雅子)

AERA 2022年7月11日号