東北大学では高校教員出身の特任教授6人を入試センターに配置。高校と対話を重ね、イメージをすり合わせることで、学ぶ意欲の高い学生が集まる(撮影/門間新弥)
東北大学では高校教員出身の特任教授6人を入試センターに配置。高校と対話を重ね、イメージをすり合わせることで、学ぶ意欲の高い学生が集まる(撮影/門間新弥)

 大学入試といえば“一発勝負のペーパーテスト”のイメージが強いが、実はこうした一般選抜で入学する学生はいまや半数以下だ。特に拡大しているのが総合型選抜(旧AO入試)。大学入試にいま何が起きているのか。AERA 2022年7月11日号から「大学」特集の記事を紹介する。

【グラフ】総合型での入学者は20年間で何倍になった?

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 初対面の4~5人のグループがテーブルを囲み、その場で与えられたテーマをもとに討論を進める。時間は30分。傍らには面接担当者が陣取り、一人ひとりの振る舞いや発言内容を入念にチェックする──。

 就活のグループ面接さながらのこのシーン、実は大学の総合型選抜(旧AO入試)で行われている入試メニューの一つだ。

「総合型選抜にチャレンジする学生は大変だと思います。書類でどれだけ上手に自己アピールしても実際の言動を見れば筒抜けですから」

 こう話すのは河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員だ。

 ペーパーテストで測れない志望意欲や能力を、大学・学部ごとに創意工夫し考案したさまざまな形態の試験で測り、数カ月かけて獲得したい学生を絞り込む。一方の学生は第1志望が原則。

「口先だけでもダメ。一目ぼれもダメ。大学と学生が互いにミスマッチを防ぎながら進路を決める。総合型選抜は究極の“お見合い入試”です」(近藤さん)

 文部科学省によると、2021年度の総合型選抜での入学者数は私立は7万1292人、国公立は6629人で、20年前と比べると、私立は4.7倍、国公立は11.5倍に増えている。さらに総合型選抜に学校推薦型選抜を合わせると、私立は58.2%、国公立は20.8%を占め、全体でも一般選抜で入学する学生はいまや半数以下だ。

 なぜ近年、総合型選抜が拡大しているのか。そのヒントは、総合型選抜のパイオニアともいえる東北大学にある。

 2000年度の工学部、歯学部を皮切りに、09年度以降は全学部で実施。募集人員全体に占める比率は21年度入試で31.6%となり、目標の3割を突破し、「国公立大学で最多比率」(同大入試センター)だ。滝澤博胤(ひろつぐ)副学長は「大事なのは大学に入学した1年目」と強調する。

「1年生修了時の成績と大学での最終成績は強い相関がありますが、入試成績と入学後の成績はそれほど強い相関はありません。つまり、大学入学をゴールと捉える学生と、学びのスタートと考える学生では卒業時に大きな差が出るということ。総合型選抜の強みはここにあります」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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