忙しい日々を送っていれば疲れやストレスもたまる。心身のサインを見逃してはいないだろうか(photo 写真映像部・戸嶋日菜乃)
忙しい日々を送っていれば疲れやストレスもたまる。心身のサインを見逃してはいないだろうか(photo 写真映像部・戸嶋日菜乃)

 少し無理をしてでも、仕事には全力で取り組みたい──。そう考える社会人は多いだろう。だが、無理が重なれば、心身に不調をきたすこともある。AERA 2022年7月4日号から。

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 仕事もプライベートも大充実している、はずだった。

 東京都在住の20代女性は、希望してファッション関係の仕事に就いた。業務は早朝出社、深夜帰宅はざらだ。だが、やりがいがある。休日は休日で忙しい。彼氏とデートし、自分磨きのため、美容院やエステ、ネイルサロンに通った。

 毎日フルパワーで輝いている。そう思っていた。円形脱毛症ができたのはそんな折だ。

 脱毛を見つけた時、「“リア充”もストレスになるんだな」となぜか笑えた。円形脱毛症経験者の友人から「ストレスだけが原因じゃないかも。病院へ行ったほうがいい」と助言されたが、日々に追われ、いまだに病院探しさえできずにいる。

ストレス解消の間食で

「ポテチが、私の癒やしでした」

 30代の女性は、自らの5年前を思い出して苦笑した。当時はフリーライターへ転向したばかり。仕事が途切れるのを恐れ、依頼はすべて受けた。締め切りが重なり、自宅にこもりっきりの日が続いた。友人たちの楽しそうなSNS投稿を尻目に、ストレス解消にと食べたのが大好きなポテトチップス。しょっぱいものの後は、アイスクリームにも手が伸びる。顔には吹き出物ができ、いつの間にか体脂肪率は30%を超えた。

 いまでこそ独立以前の体重に戻ったが、一時期、体のコンディションは「最悪」だった。

 仕事に邁進(まいしん)する女性は多い。一方で、セルフケアがおざなりになってはいないだろうか。

 複数の企業で産業医を務める池井佑丞医師(「リバランス」代表)が言う。

「高熱が出ている時、『日ごろの不摂生のせいだから』とジョギングを始める人はいませんよね。ところが、ストレスの場合、心身の不調が生じていても、そのサインを無視して頑張りすぎてしまうんです」

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