写真説明:入院中に毎日飲んでいるコンビニのコーヒー。普段はなかなかコーヒーをゆっくり飲む時間がないので、おいしくいただいています/江利川さん提供
写真説明:入院中に毎日飲んでいるコンビニのコーヒー。普段はなかなかコーヒーをゆっくり飲む時間がないので、おいしくいただいています/江利川さん提供

 この原稿を書いている6月初旬。実は帯状疱疹(ほうしん)で体調を崩して入院しています。

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 腫れも治まり、身体はすっかり元気になりましたが、あと数日点滴を続けなければならないらしく、もうしばらく入院が必要なようです。

 なかなか無い機会なので、今回は「障害のある子どもを育てる母親が突然入院したら」というテーマで書いてみようと思います。

■まず長女の預け先の調整

 頭痛や皮膚が痛むなどの症状が出始めてから3日目。受診した皮膚科クリニックで「総合病院へ行った方が良い」と言われ、紹介状が出ました。皮膚科では恐らく入院になると言われたので、私がいなくても家の中が何とかまわるようにといろいろ考えました。何よりもまずは、医療的ケアが必要な長女の預け先の調整から始めました。

 たまたま長女は、その2日後から大学病院で4泊の予定でレスパイトケア(※病院などが、家族が行っている介護を一時的に代替するための入院のこと)が入っていました。現在はコロナ禍により、前日にPCR検査のために受診しなければなりません。私の帯状疱疹は顔に出たため、片目がうまく開かず運転できる状態ではありませんでした。夫もその朝だけはどうしても仕事の調整がつかず、長女を病院に連れていける人がいません。小児科医の友人あーちゃんに相談したところ、長女のかかりつけ医としてクリニックでPCR検査ができるように大学病院に交渉してくれました。

 その後、私も大学病院のソーシャルワーカーさんに連絡し、入院の可能性を伝えてレスパイト期間の延長ができないかとお願いしてみました。すると急遽院内で検討して下さり、大学病院での前日のPCR検査を当日の朝10時に変更し、陰性であれば長女はそのまま入院、さらに私の入院期間が確定したら、退院する日まで入院を延長してもらえることになりました。長女は夜間に人工呼吸器を使っているため、自宅周辺の病院や施設では受け入れてもらうことができません。自宅から1時間程離れたこの大学病院が唯一預けられるところであり、ここがダメなら児童相談所に入ってもらい、一時保護という形でかなり遠い場所に入院するしかなかったので、本当に助かりました。

■日頃のワンオペの影響

 レスパイトの前日は、朝、私が長女を特別支援学校のスクールバスに乗せ、登校させてから、私の受診のために総合病院へ行きました。やはり入院となったため、すぐに大学病院に連絡し、長女のレスパイトの延長をお願いしました。そして長女が学校からデイサービスを経由して帰るまでに夫に帰宅してもらい、お風呂の介助や夜のエネーボ(※経管栄養)の注入を頼み、さらに一晩、長女の隣で一緒に寝てもらいました。

 人工呼吸器は命を守る機械のため、ほんの少しマスクがずれただけで、具合が悪くなくてもアラームが鳴ります。そのため、仕事に支障が出ないように、普段、夫は別の部屋で寝ています。アラームによる睡眠不足や、ずれた呼吸器のマスクを元に戻せるのかととても心配でしたが、まかせるしかありません。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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15年前の入院では1歳の双子を一人ずつ両実家へ