15年前に流行語大賞にノミネートされた「干物女」。最近ではその言葉を聞かなくなったが、令和版・干物女進化を遂げていた。その背景を『ホタルノヒカリ』作者のひうらさとるさんに聞いた。AERA2022年6月27日号の記事を紹介する。

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 ドラマ制作が発表された2007年当時、主演の蛍役、綾瀬はるかさん(37)ら女性出演者は、干物女のスタイルを「あるある」「服をまとめて脱ぐのわかる」と言ってくれたんですが、相手役の藤木直人さん(49)は「本当に?」と驚いていた印象です。

(女性にとって)普通のことだけど、あえて声高には言っていなかったのでしょう。蛍を見て、同じでいいんだと思えた人もいました。

 最近は(男女ともに)自分は陰気な「陰キャ」だ、オタクだ、と言っていい感じになりましたよね。それと同じでもともと自分の中に秘めていた性格だけど、言ってもいい空気になったのだと思います。

 マンガが終了した5年後、続編を出しました。続編を描くにあたって、04年に始まったシリーズを読み返したら、27歳会社員の蛍の暮らしは今となっては贅沢だったと思いました。蛍はファッション誌のコーデをそっくりそのまま高級な服を買っていましたが、最近は雑誌でユニクロが特集される時代です。今、蛍が生きていたら、服を買うのにメルカリを使うかもしれません。恋愛も何か意思があってしないのではなく、金銭的に恋愛する余裕がない人もいると思います。干物女でいられない人もいるでしょう。

 では、「今の女性を名づけるとしたら」とよく聞かれますが、蔑称(べっしょう)になったらよくないというのと、一つのくくりにできない感があります。みんなが同じものを目指す時代ではなくなり、生き方は多様化しました。そういうふうに個々を大切にするところは、良い社会になっているんじゃないかと思います。

AERA 2022年6月27日号