日本の少子化は、2016年に出生数が100万人を割りこんで以降、ギアを上げて加速している。少子化を克服するためには、若い頃からの正しい性の知識も重要だ。AERA 2022年6月20日号の記事から紹介する。
* * *
2012年2月、NHK「クローズアップ現代」が「卵子の老化」を特集した。衝撃が広がる中、朝日新聞の「声」欄に、33歳の女性のこんな投書が載った。
「私が学生の頃は、世間では女性総合職がもてはやされていました。『女性も働き続けるのが当然』という風潮が強く、(中略)30代後半からは妊娠しにくくなるという事実は私の耳には届きませんでした」
あれから10年。産むならば、あまり遅くならない方がいいという認識は定着しつつある。ここに、少子化を克服する突破口がありそうだ。
「若い頃から性に関する情報を正しく得て、コンスタントに話せる環境があれば、誰もがもっと主体的に、安心して自分の人生を歩める。産みたいという想いも守ることができる」
と話すのは、「#なんでないのプロジェクト」代表の福田和子さん(26)。世界の避妊方法や日本の現状を発信し、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)」の重要性を訴えている。SRHRの柱には「すべての人が、子どもを持つか持たないか、いつ持つのか、何人持つかを自己決定できる権利」がある。 性に関することを考えることは、恋愛、就職、結婚、出産、子育て、介護を含めたライフプランの構築につながる。企業の女性リーダー育成を手がける「Mentor For」代表の池原真佐子さんは言う。
「会社の中で、プライベートを含んだ話をしにくい雰囲気がある。でも、余計なお世話ではない。上司は部下と向き合うべきだし、将来希望する子どもの数のことまで信頼関係を構築して話し合いができれば、もっとライフプランは描きやすくなる」
『これが答えだ! 少子化問題』などの著書がある東京大学の赤川学教授(社会学)は、少子化が加速する現状を、ポジティブに読み解く。
「誰もがみな、ある程度の年齢になったら結婚して、子どもを産むべきだという同調圧力がなくなってきているということでもある。社会がいい方向に動いている面もあると思います」
その先に、政治的思惑や時代背景に左右されずに、産みたい人が産みたい時に、安心して産める社会がやってくるかもしれない。(編集部・古田真梨子)
※AERA 2022年6月20日号より抜粋