作家の林真理子さんは日本大学芸術学部出身で、7月1日に母校の新理事長に就任する。日大で女性が理事長を務めるのは初めて
作家の林真理子さんは日本大学芸術学部出身で、7月1日に母校の新理事長に就任する。日大で女性が理事長を務めるのは初めて
 日本大学の理事長に就く作家の林真理子さんには、大学刷新が求められている。東京大学初の女性理事で、今は成蹊学園・学園長の江川雅子さんに期待を聞いた。AERA2022年6月20日号の記事を紹介する。

【江川雅子さんの写真はこちら】

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──日本大学の新理事長に就く作家の林真理子さん(68)は、6月3日の記者会見で「(日大の)一番の課題は体質の古さとか非常にマッチョな体質」と言いました。日大では少なくとも1989年以降、女性の理事は一人もいません。

江川:日大のホームページの理事・評議員・執行部の名簿を見たら、延べ150人以上いるうち女性は数人しか見当たらず、驚きました。一般的に、日本の大学は女性のリーダーが少ないのです。多様性という点で、日本の大学は遅れていると思います。

■海外では当たり前に

江川:米国では(名門の)アイビーリーグ8大学のうち6大学で、すでに女性学長が誕生しています。英オックスフォード大学の現総長は女性で、次も女性が務めることが決まっています。海外では当たり前のように女性の大学トップが増えています。

──江川さんは2009~15年に東京大学で初の女性理事となりました。今春からは成蹊学園(小学校~大学・大学院)初の女性学園長を務めています。理事長を補佐する現場のトップですね。女性が登用されると、どんな影響が出ますか。

江川:多様な意見を検討するなかで、より良い意思決定ができます。私の調査では、男性ばかりの会議に女性がはいると、前提が違うゆえに質問が出て議論の質が高まるという指摘がありました。

 逆に日本人の男性という同質な人が集まる組織では、グループ・シンク(集団浅慮)が起きる懸念があります。「それは違うんじゃない」と異議を言いにくい空気になるのです。例えば、企業の取締役会でも男性ばかりの場合、「みんなわかっている」と思ってあまり質問や議論をしません。空気によって、重要な問題について誤った意思決定がなされる危険性があります。

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