俳優のウィル・スミスが、自身の妻をジョークにしたコメディアンのクリス・ロックに激怒した「平手打ち」騒動。米国を拠点に活躍するコメディアンのSaku Yanagawaさんはどう見たのか。AERA 2022年6月13日号でジョークについて持論を語る。

【写真】ウィル・スミスがクリス・ロックを平手打ちしたシーンがこちら

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 クリス・ロックさんはジェイダ・ピンケット・スミスさんへのいじり方を間違えました。ただ、ロックさんのことを知らずに「容姿いじりはおかしい」と言うのはどうかと。例えば、漫談家の綾小路きみまろさんは「あれから40年」と太った人をいじりますが、面白いですよね。そういういじりが「お約束」という前提を共有しているからです。

 何かをいじっては絶対にだめ、いじりを笑うのもだめだと押し付けるのは暴力的だと思います。要は、誰が、どういうふうに言うかです。

 僕は原爆をジョークにすることがあります。米国の野球を見に行ったとき、招待された退役軍人が「ヒーローの〇〇さん」とアナウンスされました。観客は起立して拍手しますが、僕はどうすべきか複雑な気持ちになりました。でも、無礼はしたくない──。この経験をネタにしました。

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